第27話 (最終話)勝利。そして‥‥‥
『はっ! 川の向こうでばあさんが‥‥‥』
「逝きかけてたの?」
傾眠状態から覚醒した正二さんが、どうにか意識を取り戻した。
なんかドタバタしていて忘れていたが、今は敵の大群が絶賛侵攻中なのだ。
オレが張ったプチファイヤーウォールも、そろそろ小さくなって役目を果たさなくなってきたし。
ということで、そろそろお願いしますよ先生。
『ふむ、睡眠によって程よくMPも回復したし、そろそろやろうかの?』
「いや、ずっと寝たきりで常にMP満タンなのでは?」
『いざ参らん』
「あ、このジジイ耳聞こえないふりしてる」
『これはー余のメラじゃー』
「その詠唱やめい!」
どっかーーん
こうして、大賢者こと正二さんの
◇ ◇ ◇ ◇
―それから1年後―
「吉岡特務2佐。ご命令を。」
オレは昇進し、拠点攻略部隊の司令官を任されるようになっていた。
今日の攻略目標は、かつてアジア各国の連合軍の拠点であった『メリデトゥスク要塞街』だ。
この街は、VRMMO『ブリルリアルの栄枯衰退』において、使用言語によりスタートの街が各言語ごとに分けられてチュートリアル的な序章を終えた後で各街でスタートした多種多様な言語、国のプレイヤーが集合を果たす街である。
いわば第2のスタートの街として設定されている街なだけあり、その規模は大きく、そして今、裏月面上に現存するこの街は敵の勢力に占拠されて久しかった。
つまりはここを占拠する事により、これまで崩壊寸前まで敵に押し込まれていた世界連合軍は、各国共通の反撃の為の橋頭保が得られることになるという、まさに全体の戦局を左右するターニングポイントとなる戦闘である。
「よし、まずは『アセンド』部隊による魔法斉射だ」
「よし。ではワシから。ーこれは余のメラじゃー」
「いや、この場合はメラゾーマにしましょうよ?」
「斉射って言っただろうが。一人で撃つんぢゃない」
そして正二さんの極大魔法の発動と、それに対するいろはちゃんのツッコミが炸裂する。
正二さんのメラゾーマ?が敵の前衛を焼く尽くした後、『アセンド』部隊による魔法第2射を発動させる。
「よおーし、るるちゃみの氷魔法いっちゃうよ?!」
「そんじゃおれは爆炎魔法な」
「おいこら。るるちゃみの氷にパワーボウズが炎使ったら相殺されるぞ」
「そんじゃおいらがサンダーレインを」
「おう、牛乳、トイレは大丈夫か?」
「だからおまいら、指揮官さまは斉射って言ってるだろ? 属性合わせなさいよ」
そう、オレのゲーム内でのギルド【予言の遺産】メンバーもアセンド部隊として参戦してくれている。
あのあと、ギルメン全員がオレの地元に行って正二さんから手ほどきを受けたらしい。
その結果、ギルメン全員が【覚醒】に至り、こうしてオレと轡を並べて戦ってくれることになったのだ。
当初は命の危険があるからと断ったのだが、ギルマス『友情階段』さんの「オレたちギルメンで友達だろ?」の一言に絆されてしまったのだ。
なお、はじめてリアルで顔を合わせた『るるちゃみ☆』ちゃんはまだ中学生であったがどうにか親を説得して特別公務員扱いで自衛隊に所属したそうな。
あと、『るるちゃみ☆』ちゃんといろはちゃんが顔を合わせるたびになにか火花のようなものがほとばしっているのが不思議でならない。
まあ、仲が悪いわけではないようで、時折「シェアだね」とかの言葉が聞こえてくるからそれなりに仲はいいのだと思いたい。
「みんな撃ったね! それじゃ、私の番!」
そして、ギルメンたちの属性を合わせたブリザードが敵陣に吹き荒れた後、いろはちゃんがとどめの一撃を放つ。
「
「よし! 『トランス』部隊突撃! 打ち漏らされた残敵を掃討せよ!」
オレ達は、月の裏側で人知れず人類のために戦っている。
オレたちの戦いは、地球上のメディアで報道されることもない。
勝っても称賛はされず、負けても非難もされない。
それでも、オレ達は戦い続ける。
『古の大賢者』と言われた正二さんから受け継いだ魔法の能力で。
だから正二さん。
オレ達の戦いを見守っていてくれ!
「わし、生きとるんじゃが?」
――― 完 ―――
田舎の老人ホームのおじいちゃんが昔は大賢者だったと言うので魔法を習ってみた。 桐嶋紀 @kirikirisrusu
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