第6話 ガルドside

「クソっ何でなんだよ。おかしいだろ。」


俺は、この世界の住人とは、明らかに違う点が一つある。


それは、前世の記憶があるということだった。


前世での俺は、容姿淡麗で頭脳明晰、文武両道のできる、世界に愛されていた男だった。


更に幸運なことに、俺の親はかなりの金持ちで、俺は、仕事をしなくても遊んで暮らせるような人生だった。


そのはずなのに。


俺の25歳の誕生日、親父のバカ野郎がヘマをして、会社は倒産してしまった。


それに見かねたのか、お袋はその次の日には消えてしまっていて、これまでの人生とは180度変わってしまった。


その後すぐに、数年前から起こると言われていた南海トラフの地震が起き、建物の倒壊に巻き込まれて死んでしまった。



だが、やっぱり俺は神に愛されていた。


俺のことを不憫に思ったのか、この世界の女神が、転生させてくれて、チートスキルの『バフ』ももらった。

これのお陰で俺が育った村ではチヤホヤされて、幸せに育った。

しかし、それはこっちの世界で俺が18歳になった時に変わった。


どこからか俺の噂を聞きつけたのか、俺の住んでいる村に勇者パーティーが来て、俺のことを勧誘したのだ。


パーティーに加入してから、俺はさらに悠々自適な生活を送った。


なのに、今度はこっちの世界でもついていなかったらしく、パーティーを追放された。

それだけなら、まだ、向こうで流行っていた追放物のテンプレだと思えて、後でアイツラにザマアできると思っていたのに、ザマアどころか、おじさんからの信用を失ってしまった。さらに、万が一のことを考えて、相手をレベル1にする魔法のスクロールを大金をはたいて買ったのに、まるでそれが効かなかったかのように勇者のやつはピンピンしていた。


「なんでだよ、俺が主人公なんだから、俺の思い通りに動けよ。クソが、どうしてこの俺が、」


そう愚痴りながら歩いていると、変なマントを被ったやつにぶつかってしまった。


「すいません。」

そう謝ってその場を去ろうとすると、マントの男に声をかけられた。


「なあ、お前、『元』勇者パーティー所属のガルドだろ?お前に利のある話を持ってきた。話だけでも聞いてもらえないだろうか?」


元を強調された気がするが、まあいい。俺に利があると言っているということは、俺に利益があるということだ。話に乗ってやろう。


「いいだろう、その話、聞かせてもらおうじゃないか。」









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役立たずを追放したら冒険しやすくなった @kesuuso

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