第9話 プリっと出てきた
「毎回毎回ダイエットするのなんとかならんかな」
味のない世界に唯一の味をもたらしたあの味は、俺の現在の生きる目的だ。
そのためだったら友達(ネズミ)を100人犠牲にすることを厭わない。
友達(ネズミ)だって俺に食べられるのは嬉しいだろう。
win-winの関係だな。
ただ現状、このやり方には課題がある。
『分裂』
このスキルを使うたびにスライムの体積が減少しているのだ。
分裂しているから当然といえば当然だが。
その後、殺した友達を食べているから分裂した直後と比べれば増えてはいるものの、体積は総量で見れば減っている。
減少した体の体積を元に戻すためにそこら中のゴミを食べる必要があるのだが、さすがに面倒になってきた。
味を知らなかった時は大して面倒だと思ってなかったんだけどなぁ。
あの時はまずいものも普通に食べれたけど、今はちょっと遠慮したくなる。
子供の時に食べれたものも、大人になって食べたら美味しくなかったような気分。
もしくは夕食を分け与えたがために、舌が肥えてしまってペットフードを食べなくなった猫のような気分だ。
食べたくねぇ。
「やっぱうまいもん食べたいよな…。まずいものを作業的に食べる食事はしたくない。それは生命への、世界への冒涜だ。うん。そうだ。冒涜なのだ」
まずいところは食べたくない。
ショートケーキの上の部分だけを食べたい。
イチゴが1個と半分のやつが2個乗ってる部分な。
パンの耳はいらない。せめてラスクにしてくれ。
え、これらは冒涜じゃないのかって?
あくまで想像ですので。
俺の前に出されてないから問題ないんです。
「それでスライムの体積が減る問題だが、せめて食べた分は回収できればいいんだが。」
何か良い方法はないだろうか。
そうすれば無限に回収して、無限に分裂するなんてこともできる。
分裂して回収を繰り返す無限機関の完成だ。
ノーベル賞だって夢じゃない。
ん? 回収?
回収…!
そうだ! 『吸収』スキルで分裂したスライムを回収ができるんじゃないのか!?
分裂したものを吸収すれば無限に食べられるぞ!
よし。
今度はともだちを苦しんで殺した後に外に出てくるように命令しよう。
それならばOKだ。
「ほら、僕のお顔をお食べ。そして殺した後に出てくるんだ」
俺は新たなドブネズミの友達を見つけて、新しい命令で殺した。
いつも通り、ドブネズミは人生の最高と最低を味わうような顔で死んでいった。
彼の人生は一体幸福なんだろうか。
「まぁ、どうせ人生の最後なんで苦しみばかりなんだろうから幸せを感じながら死ねるなら幸せに違いない」
つまり俺はいいことをしたんだ。うんうん。
それで結果は確かに俺の分裂したものが外に出てきた。
出てきたのはいいのだが…。
「なぜケツから出てくる」
諸々のものと一緒にケツから出てきた。
それはもうプリッとね。
あまり見たくないものだから、セルフモザイクで覆うことにした。
BPOにも配慮している。
「いやいやおかしいやろ。なんで口からじゃなくてケツから出てくるねん」
そりゃ出口は2つあるんだけどさ。別にそっちから出てこなくていいじゃん。
今までも餌となった死体を丸ごと食べていたんだから、内容物の中にもろもろも入っていただろうけれど、それでも意識したくはないよね。
ふむ。
「…うん。俺は何も見ていない。不都合なことを見ないというのは知恵あるものにしかできない行為だ。そのはずだ。」
俺は見なかったことにして、すぐに吸収した。
…中身が何であろうと味はした。ほのかにうまかった。
悔しい。
こんなのに味を感じてしまう自分が悔しい。
「食の探求に失敗は付き物。そして失敗とは後退ではなく成功までの一歩なのだ。だからこれを受け入れよう。しかし! こんな食べ方は二度としたくない。コピ・ルアクなんて認めない。絶対にだ」
あんなもの食べるなんて気がどうかしている。
もっといい食べ方がないか研究を進める必要がある。早急にだ。
絶対に満足する結果を見せてやる。
…しかしスライムとして異世界転生してから食べることにしか努力してないな。
なんて食い意地を張った生き方。
スライムとしては正しい、のか?
なんか悩んでると、コーラ飲みたくなってきたな…。
キンキンに冷えた2Lコーラを一気に飲みたい。
人間の頃は無理だったと思うけれど今なら可能な気がする。
ステータス
名前:なし
種族:スライム
種族:最下級精霊
霊力:13
貯蓄瘴気:6
転生特典スキル:『鑑定』、不明
固有スキル:『分裂』『吸収』『変換』
称号:『友情を食すもの』
スキル:
「僕のお顔をお食べ」と言いながら無理やりねじ込む系スライムに転生しました。 サプライズ @Nyanta0619
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「僕のお顔をお食べ」と言いながら無理やりねじ込む系スライムに転生しました。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。