第53話 キミと見上げる空

――――1年後


まだ卒業してないから学生だけど…もう【姫】ではない。


父親の加護があるから強行できた事だけど私は普通の【人間】として今、ここにいる。

何にも囚われていない自由な世界。


私と大地は父…理事長に守られ学生生活を送っている。

大地は【騎士】の力は失っても、身体能力はかなりあるから吸血鬼からの脅威は全然大丈夫らしい。

私に関しては理事長の娘には変わらないから狙われない。【姫】が何よりも危険だったんだと思った。


ちなみに蓮君は意外にも一番、解放された人物かもしれない。

人として生活するようになって、人並みに交流をもち、恋愛をしているみたい。

【月村】から離れたのが良かったんだよね。



****



「ねぇ大地」

「ん?」

「空ってキレイだね」


囚われていた時とは空が違って見える。とてもキレイ。


「そうだな」


私の隣には大地がいる。そして…2人の宝物。

私の腕の中には小さな【騎士】がスヤスヤと眠っている。


案の定…結ばれた翌月には妊娠が判明したのは言うまでもない。

私は出産予定日の1週間前まで授業に参加し、産後1ヶ月で学校に復帰した。

大地は父と同じ道を進んでいる。高校を卒業したら婿入りして、大学を卒業したら会社の補佐役として就職する事になっている。


「卒業したらやっと結婚できるな」

「早く卒業したいね」


卒業するまでは恋人だったから、やっと夫婦になって家族になれるんだ。


「卒業と同時に入籍と2人目だからな」

「はい、はい」

「美空に似た女の子がいいな」

「その為には、たくさん愛してね?」

「永遠に愛してるよ」



普通とは違う私の世界だけど、見上げる空は一緒。


透夜とうやがお兄ちゃんになるの、早そうだな」

「だといいな…兄弟は欲しいもん」

「何人でも作ってやろう」

「お母さんも孫が可愛くて仕方ないみたいだしね、楽しみをいっぱいにしたいよね!」



新たな私の物語が始まる。私達家族の物語が。



「透夜の次は何にしようか?」

「空が決めてくれるよ」



いつだってキミと見上げる空は…優しく幸せに私を満たしてくれる。この先もずっと。




―――――完





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キミと見上げる空 KOMUGI @mugiko4

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