転生して勇者になるはずだった俺は大商人になる! ー女神は言う。『鑑定』なんてゴミスキル!もっと良いの選んで魔王討伐してちょうだい!ー
ピコ丸太郎
第1話 生命喪失
俺は31歳総合商社に務めるサラリーマン。
商社マンとは言え、別に意識高い系とは違う。
洒落たバーに美人お姉さんをアテンドして、そのままお持ち帰りして、前日と同じワイシャツで出勤。なんて事は、この人生でやった事も経験した事もない。
もっと言うと、彼女いない歴イコール年齢だ。
だけど、童貞では無い。
社会人になってから、先輩と同行営業をする事に。
その先輩はなかなかぶっ飛んでいて、どれだけ年数重ねても、やはり取引先との商談はいつもテンパるとの事。
それには俺も同意。
そこで連れてかれたのが、テンパった身体と何故か熱を籠った身体を冷ますために行ったのが、池袋のソープ。
笑った。笑ったよ。
仕事中だぞ。
まあそんなこんなで、俺は意図せずに童貞ってヤツを脱ぎ捨ててしまった。
ゴミ箱にポイだ。
あれだけ大切にしてたのに、こう言うシチュエーションを前にしたら、しっかり俺のアソコは反応しやがる。
俺の童貞は大切に保管しとこうと思っていたが束の間だ。
保存状態が悪かったのか。
そうじゃないだろ。と突っ込みを入れたい。
どうせなら、大切だと思える人に俺が大事にして守り抜いた童貞を捧げたかった。
その相手が出来るのはいつになるのか分からなかったが。
それから俺は少しショックで仕事を休んだ。
風邪では無い。
熱が出た訳でも無い。
単純に心が傷んでたから。
と言う理由だ。
そりゃあそうだ。
童貞喪失だぞっ!
大切に保管してたのに……。
だから俺は童貞ではない。
ただの素人童貞だ。
――くそおぉぉ!!
心神喪失だった。
喉には何も通さない。
通してくれない。
重症だった。
そんな心を癒すため、バックナンバーのゲームをやってみた。これがなかなか良作で神ゲーだ。
コー○ー・テク○から発売された『大航海時代』。
めっちゃハマった。
海賊として悪名を高めて、無敵艦隊と戦うか。
それとも、貿易を行って、商人として大金持ちになるか。
このゲームの最終目標は世界地図を完成させる事。
集落なんかも発見してしまう。
出てきた集落というか特産物というか……
『モアイ像』だ。
これには大笑いだ。
しっかりと三体のモアイ像が並んだイラストだ。
さすがはコーエーだ。
賛辞を贈ってやりたい。
一応、俺は商社マンって事で、海賊行為よりも商人として貿易を慎ましくやる方が性に合っていた。
金が貯まると、帆船をアップデートしていく訳だ。
最終的にはガレオン船やガレアス船になるのだが、金持ちが海に出て行くと海賊たちの獲物だ。
砲撃やら水夫でズタズタのボコボコにされて、集めた帆船は沈んで行く。
そりゃあそうだ。
商人としてやってるんだから、大砲ゼロに砲弾ゼロの水夫を限りなく少なくして、積荷の量を多くする。
もっと言うと、積載量極振りだ。
さすがはコーエーと褒めるべきは他にある。
無駄にリアルってところだ。
積載量極振りで、満載状態の帆船の群れなのだから、機動力は鬼のように遅い。
逃げられる訳がない。
そうなるともはや詰みだ。
こうして、海賊に襲われるとリセットを繰り返しながら、当時ハマったゲームを再びやっていた。
自分への傷心見舞いで。
でもやっぱり、人間は腹が減る。
食欲や睡眠欲には打ち勝てない。
もっと言うと、結論からして性欲にも打ち勝てない。
それを俺自身の身体で証明してしまったからだ。
情けないなぁ……。
と独り言を呟きながら、空腹で限界を知らせる目眩が襲って来て、深夜のコンビニに足を運んだ。
わりと、この深夜帯のコンビニは気に入ってる。
雰囲気というか、普段は殺伐として雑踏だらけの街に、ポツンとひとりだけ真っ暗な街に潜んでるような感覚だ。
何故か、それが心地よかった。
「ブウウン、ブブン」
配送トラックのエンジン音が、真夜中の街に響く。
これも案外慣れると心地いいのだ。
これも真夜中の街に響くひとつのBGMになる。
と呑気に目的地であるコンビニに向かってた時だ。
そのトラックがエンジン音吹かしながら俺に突っ込んで――。
運転手居眠りしてるじゃないか。
いくら深夜配送で眠いからとは言え、寝てしまうか。
避けろ! 俺――。
くっ、ダメだ。
空腹で目眩襲ってくる身体じゃあサイドステップなんてそんな気の利いた事出来そうにもない。
来るな! 来るなよ――。
コンビニには悪いが……突っ込むならコンビニに行ってくれ。
ありがちなブレーキとアクセル踏み間違えた的なアレだ。
コンビニさんすいません。
でも今、人命が賭かってるんです――。
くそぉぉぉ!
こんなんじゃ死にきれない。
ソープ行って童貞喪失して、心神喪失して空腹で目眩が原因でトラックに跳ねられて死ぬ。
そんなん、いいネタだろ!!
その上、生命まで喪失って……。
お茶の間に笑い届けてどうする――。
俺はこう見えて心神喪失だぞ。
労われよ。
いざって時、人間ってこうも弱い生物なのか。
動けないじゃないか。
足が竦む。
それなのにトラックは止まらない。
エンジンをしっかり吹かすトラックは直ぐそこまで来てるのに――。
トラックに接触する瞬間、誰かが俺の背後で何かを言った気がする。
それに何か光った気がした。
そうか。
これがよく聞く走馬灯ってヤツなんだ。
俺は今飛んでるのか?
トラックに跳ねられて、今飛んでるのか?
はあ、案外簡単に人って空飛べちゃうもんだな。
だってほら、俺今飛んてるし――。
ある意味で重力すら感じないくらい――。
違う。
感覚が失われた。
何も感覚が伝わってこない。
どうなんだ。
「ガハッ……!」
俺の身体は、自分の体重の何十倍以上の重量を持つトラックに跳ね飛ばされて宙を飛んで、コンクリートの地面に打ち付けた。
感覚は襲ってこない。
良かったのか。
痛みなんて感じない。
良いじゃないか。
痛みを感じて苦しむよりかは――。
そう思えるって事は、まだ死んでないのか。
「グハッ……!」
そこから更にタイヤが身体をめり込んだ。
色々とヤバいもんが口からも脇腹やら腹から飛び出した。
海外映画で見るような感じのヤツだ。
きっとこれはグロ過ぎてモザイク加工されるだろう。
これ…………、きっとダメなヤツだ――。
こうして俺は童貞喪失して、そのショックから心神喪失して、トラックに跳ねられて生命までも喪失してしまったらしい。
転生して勇者になるはずだった俺は大商人になる! ー女神は言う。『鑑定』なんてゴミスキル!もっと良いの選んで魔王討伐してちょうだい!ー ピコ丸太郎 @kudoken
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