醜く残った傷跡に過去の痛みを覚えつつ、それでも忘れ難い愛おしい記憶に縋り、むしろ傷口を広げるような真似を繰り返す、そんな苦しい生き方をしている少年。
同じように傷を負い、しかしそれを消し去りたいと願いつつ最後の一歩を踏み込めなかった少女。
ひとりはどうしようもない心から、もうひとりは環境からと状況も違えば負っている傷も異なっている。
それでも、ふたりが互いに自分を投影し、それが物語を動かすことになる──。
扱っている題材が題材なだけに、なかなか受付難い人もいるかもしれません。
読後感も、決して清涼なものでもないかもしれません(私はそうでした)
どろどろとした苦い液体の中にほんのわずか、何か痛みのような後味が残る。
そんな「切なさ」の味がする物語でした。