第6話
マテリアル・エレクトロニクスには数々の噂や陰謀論が存在している。
アメリカ東西戦争の主犯格だの。
世界中の両陣営に武器を売りつける死の承認だの。
CEOが実は高度に造られたAIだの。
表も裏もいろいろな社会で、時には話の取っ掛りに、時には政党のガス抜きに、時にはカルトの材料に、いろいろな情報が流れていた。
その中でも一際目立っていたのは、CEOは幼い少女だという噂。
☆@☆@☆@☆
ここはニューヨーク郊外の駅。
かつては全米を結ぶ航空網が整備された空港だったが、第四次世界大戦の数々のドローンと波動兵士を用いた生物兵器が縦横無尽に空を飛び回ってる関係もあり、現在は鉄道網がここアメリカの重要インフラになっている。
「うぉ~、大きい駅だね~。魔法学校に行くやつも一つぐらいはあるかな?。」
「あっても私たちじゃまず行けませんよ。」
「うむ、やっぱりそうだよね戦友。」
「いや、私にふらないでください。」
何も知らない人が見たら幼い少女がキャッキャしてる大変微笑ましい雰囲気なのだが、等の本人たちは雑談混じりに周囲警戒を怠らない。
「チャシャ、オートマタの方は問題ない?。」
「はい、ここにあるオートマタは軽くウイルスチェックしましたが問題ありません。」
「こっちも特に目立った臆病者はいない。こんな任務は俺に向かないはずだけど。」
「だからなんでこっちにふってくるの……。」
「リーダーだから。」
「リーダーですから。」
「…………、はぁ……。」
決まったのはブリーフィングが終わったあと、4人による指名多数決により、満場一致でユリナに決まった。
ただユリナにとっては常に誰かの指揮下か、1人でやってきた時間が多かったため、未だに自分に合わない気持ちが強かった。
《『まもなく特別列車の発車時刻になります。関係者は速やかにご搭乗をお願いします。』》
〈思ってたより目立つアナウンスですね。〉
(あえて目立った方がいい時もある。)
〈それもそうですが……。〉
アナウンスとともに駅にいた警備員を含むありとあらゆる人が客車の中に入っていく。
〈行きましょう。〉
「そうだね。みんな。」
「おう。」
「はい。」
「うい。」
関係者達に紛れてユリナたちも寝台車に乗車した。
寝台車の窓をかける木、木、木。
緑と茶色のカーテンが窓を流れて行く。
「ワーッふ〜、ひろーい。」
ホテルの寝室と紛うことなき豪華な装飾をされた寝台車。
特別誂えの寝台車。
コンテナの豪華なプレハブホテルの技術を活かして作られたそれはユリナたちにとっては追いつかないものであった。
だた1人を除いて。
「ラティスさん。子どもみたいに騒がないでくださいよ。」
「そうは言っても戦友。君こそ容姿らしからぬことをしているじゃないか。」
寝台車の個室にあるテーブルの上に広げられたのは拳銃やアサルトライフルなどの銃火器。
それらを収納する背負い持ちの学生鞄に偽装された収納ボックスが置かれていた。
「別に良いでしょ。これくらい。」
「そうかい。」
穏やかな暖かい瞳で見守るラティス。
そして彼……彼女の矛先は警護対象のイブに向いた。
「悪いね。こんなおじさんたちに付き合わせて。」
「別に大丈夫よ。元々そういう想定だったからそれよりもみんながみんなこんな姿になのは流石に想定外だったけど。」
「あはは、ごめんね。それで、もうちょっと
「まあ、あのCEOの娘やってたらこういう風に成長するのよ。」
「そうかい。…………、そういう事にしておくよ。」
「今なにか?。」
「いや、なんでも〜。」
ラティスは誤魔化しながら再び子どもっぽくふかふかのベッドを楽しんだ。
☆@☆@☆@☆
時を同じくして、アメリカ中東部。
低空ステルスドローンから送られてくる情報がパソコンのモニターに映し出されている。
《『目標は定刻通りに通過中。』》
AIのアナウンス通りにモニターの地図を丸い点がアメリカ大陸を横断している。
それに付随するように白い蒸気を吹きながら走る鉄道が映し出されていた。
「予定は予定通りね。」
モニターをながめているのは1人の女性。
瞳は蒸気機関車を見ていた。
《「はい。呼びましたか?。」》
「えぇ、呼んだわ。」
《「ということはそろそろ作戦開始で。」》
「えぇ、お願い。目標はCEOの1人娘の拘束。出来れば無傷でね。」
《「できる限りやります。」》
「
そう言って、彼女は通信を切った。
モニターにはアメリカを横断中の蒸気機関車とは別に、3つの点が三角形のような編隊で映し出されていた……。
レイブンリリィ・ナイト〜借金返済して身体を買い戻したら、何故か黒髪銀眼の美少女だった。〜 アイズカノン @iscanon
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