侵蝕

結城 優希@毎日投稿

侵蝕

"ガチャッ"

 

「先生!T子さんが目を覚ましました!」


「何?すぐに病室に向かう!」



──────────────────────────────


「T子さーん?聞こえますかー?聞こえたら二回瞬きしてくださーい!」


"パチパチッ"


「T子さーん?僕の手見えますかー?見えたら二回瞬きしてくださーい!」


"パチパチッ"


「良かった。意識も視界もしっかりしているようですね。それじゃあご自分の名前は分かりますか?分かるなら二回瞬き、分からないなら1回瞬きしてくださいね?あ、そうだ。親御さんは彼女の手を握ってあげてください。彼女も不安だと思うので。」


"パチパチッ"


「記憶も問題なしだと……声は出せますか?」


「テry……kbg」


「T子さん、ゆっくりで大丈夫ですよ。もう一度ゆっくり話してみてください!」


「テr…yキ……bガー」


「テリヤキ……バーガー……だと!?」


「先生!何か心当たりがあるんですか?」


「テリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガーテリヤキバーガー……………………………………」


「テリヤキバーガーという単語に心当たりはないが症状には心当たりがある。この病院で初めて症例が確認された不知の病。ここまで言えばお前もわかるだろ?」

 

「指定難病……超常生物接触型精神汚染。世間ではクトゥルフ系TRPGの一要素として扱われているアレですね。」

 

「あぁ、確認例は今回のも含め四件。一件目では辛うじて初期は話せていたために状況がわかり超常生物接触型という名称が付けられたが以降は既に正気を失った状態で搬送されることが多いようだな。まぁ国民の不安を煽りたくないと隠蔽されてるから分かってるとは思うが迂闊に話すなよ?チッ……裏の連中はちゃんと仕事しろよ。」


「もちろん患者さんの情報なんて話しませんよ。守秘義務ってやつですよね?ところで何か言いました?」


「いや、言ってないぞ?聞き間違いじゃないか?」


「そうですか。」

 

──────────────────────────────


 私の名前はT子。目を覚ますと知らなtrい天井が目に映った。私は海で釣りをしていて波に身体を持っていかれて……それで……一人で釣りは危ないんだなとか……着衣水泳の訓練をしておくべきだったなとか考えて最後にテリヤキバーガー食べたかったなぁって思ったところで……その後誰かが助けてくれたのかな?


 ていうか娘の私が病院に搬送されてるんだからお父さんお母さんがいてくれてもいいのに……なんでハンバーガーが二つあるだけなのさ。


 頭の中を整理し終えたところで入ってきた白衣のテリy…じさんを見てここが病院であtrると理解することが出来た。


 ここが病院でわかった瞬間、大きな不安が押し寄せてきた。それは目を覚ましry時からある違和感からだった。その違和感は時折思考に入るノイズだ。時間が経つにつれてその頻度がテrヤ増えている気がする。まるで私の意識が蝕まれ続けているようだった。


 病院の先生にtrヤキ必死に伝えようとしても私の口から出るのは私の思考内tリヤkのノイズだけ……それに先生の声にもノイズが……必死に意味を持った言葉を話そうとして"テリヤキバーガー"。その言葉を発した時点で私のテリヤキバーガーはテリヤキバーガーの中に……テリヤキバーガーだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

侵蝕 結城 優希@毎日投稿 @yuuki58837395

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画