第58話

自分の気持ちに気がついたことを話せば、桃は興奮状態から急に冷静になり、


 「お姉ちゃん、良かったね。幸せだよね、好きな人がいることって」


 と、優しい声色でそう呟いた。


 「恋愛なんて久しぶりだから、どうしたらいいか分からないんだけどね。今だって、ちゃんと平常心でいられるか心配だし」


 「良いんだよ、緊張しても。恋愛ってそういうもんだから」


 「そうだよね。ありがとう、桃」


 やはり桃に話を聞いてもらうと、安心する。本当に大丈夫だと思えるほどに。


 電話を切り、まだ約束の時間には少し早いが戸締りをしていると、来訪を知らせるチャイムが鳴った。


 まさかもう早乙女さんが来たのか?…いや、起きてメッセージを送ったが今だ返事はない。勝手な予想だが、きっと寝坊したのか、まだ起きていないのか。


 けれどもしかしたらという期待を込めて、インターホンを覗けば、外にいたのは彰だった。


 「おはよう、早いね」


 「おう。…ワンピース珍しいな」


 中に通そうとも思ったが、約束を控えていたため、戸締りをして出れるように、鞄を持って玄関を出る。


 彰は私の格好を見て、何故だか驚いた表情をしていて、ワンピースひとつでこんなにも驚かれるのだろうかと気恥ずかしくなった。


 「昨日はありがとう。さっき電話で桃と仲直り出来た」


 「気にしてないし、仲直りができたなら良かったよ。それにしても雪、桃の酒癖はやばいぞ」

 

 「知ってる。週末高頻度で泊まりに来て飲んでるから」


 「結構迷惑だな」


 「かなり迷惑だよ」

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アンサンブル・ジュリエット そらまめ @soraram

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