俺の嫁さんはお化けが嫌い

リラックス夢土

第1話 俺の嫁さんはお化けが嫌い

 俺は自他ともに認めるホラー好き。

 心霊関係の動画を見たり話しをすることが多い。


 だからと言って俺自身は霊感がある訳ではない。

 単に怖い話や不思議な話に興味を惹かれるだけ。


 そんな俺には嫁さんがいる。

 俺の嫁さんは大の「お化け嫌い」だ。


 怖い動画をパソコンで見てると「怖いから音消して!」とかよく言われる。

 そんな怖がりのお化け嫌いの嫁さんは絶対にお化けの存在を認めない。

 嫁さん曰く、「だって、いるって認めたら怖いじゃん」ということらしい。


 しかしそんな嫁がある日いつものようにパソコンで心霊関係の動画を見ていた俺に声をかけてきた。


「よくそんな怖い話の動画なんて見れるわね」


「だって好きなんだから仕方ないだろ。俺にも霊感があれば心霊スポットに行ってみたいな。お前は心霊スポット行ったことあるか?」


「ある訳ないでしょ。なんで自分から怖い場所に行かないといけないのよ。幽霊が見えたら怖いじゃない」


「まあ、お前は怖がりだからな。でも怖い話は嫌いでも不思議な話も嫌いか?」


「不思議な話? まあ、それなら経験あるから別に嫌いでもないけど」


「え? 経験ある?」


 思わず嫁さんの答えた言葉に俺は驚く。

 そしてどんな不思議体験を嫁さんがしたのか気になった。


「どんな不思議体験したんだよ?」


 すると嫁さんは「う~ん」と唸りながら昔を思い出すように話始める。


「いろいろあるけど、例えば中学生の時に暗くなってから自転車で自宅に帰ってたら交差点があったの。高いブロック塀があって見通しの悪い交差点だったからカーブミラーを確認したの。そしたら車のライトが光ってるのが見えたから交差点の手前で自転車を停めてその車が通り過ぎるのを待つことにしたのよ」


「それで?」


「でも自転車を停めてずっとカーブミラーに映る車のライトを見ていたんだけど、車のライトはカーブミラーに映っているのにそのライトは動こうとしないのよ。位置的にはその車は交差点の手前で停止している感じでね。私が自転車を停車した所からは高いブロック塀が邪魔して車は直接見えないから私の自転車に気付いて車が停車したのかと思ったの。だから私はそのまま交差点を渡ろうと自転車を発進させて角から出て車が停車している方の道路を見たんだけどそこには車も人も何もなく暗い道があるだけだったわ」


「は? 車が無かったのか?」


「そう。もうビックリして慌ててそのまま自宅まで急いで帰ったわ。あれは不思議で怖かったわね」


「カーブミラーに映っていたライトが自分の自転車のライトだった可能性は?」


「ライトの光はちゃんと二つあったのを見たわ。自転車ならライトは一つでしょ?」


 確かに嫁さんの言う通りだな。

 じゃあ、その車のライトは何だったんだ?


「もう一度、カーブミラーを見なかったのか?」


「え? だってもう一度見てまだ車のライトが映っていたら怖いじゃない。私は怖いのは嫌いなの。でも、まあ、見間違いって可能性もあるかなぁ」


 首を傾げる嫁さん。

 う~ん、それだけなら見間違いって可能性も無きにしも非ずだけど。


「あとは高校生の時に自分の部屋で寝ていて夜中に起きて寝返りしようとしたら自分の右側に目をカッと見開いた女性が寝ていたとか」


「え? 知らない女性が寝てたのか!?」


 夜中に自分の部屋で寝ている隣りにそんな奴いたら普通は幽霊だろ。


「うん。それでその女性にぶつかりそうになったから「すみません」って言って謝って右側に寝返りしないで左側に寝返りしたわ」


「そ、それで、どうなったんだ!?」


「う~ん、そのまま寝ちゃった。朝になったらそんな女の人なんていなかったから夢だったのかもね。でもその女性がカッと目を見開いてた顔は今でも覚えているのよねぇ。知らない人だったな」


 いや、夢でもそんな夢怖いだろ。


「それって幽霊だったんじゃないのか?」


「はあ? 幽霊がいるの認めたら怖いでしょ! それは夢よ、きっと」


 俺にしたら十分に幽霊の可能性があると思えるんだが。


「あとは……」


「まだあるのか!?」


「こないだ寝てたら天井の景色が見えてね。身体は動かないの。そしたら寝ている自分の両肩の部分から白い手がスウーッと生えてきて……」


 白い手が両肩から生えてきただと!?


「そしたらいきなりその白い二本の手が私の心臓を鷲掴みにしたの。驚いた瞬間、身体が動いて飛び起きたわ。あれも怖い夢だったなあ」


「いや、金縛りにあって白い手が両肩から出て来るってどうみても心霊現象じゃないのか?」


「怖いこと言わないでよ! 自分の家でそんなことあったら寝れなくなるでしょ! あれは夢よ! あ、夢と言えば昔泊まったビジネスホテルでも怖い夢見たなあ」


 今度はホテルの怪談か?


「その部屋はあるビジネスホテルの三階の非常階段の出入り口の隣りの部屋でね。そこに泊まったら夜中に金縛りみたいに身体が動かなくなってね。でも部屋の景色は見えててテレビがあったの。そのテレビがいきなりザザーッて砂嵐みたいについたと思ったら人の顔が浮かび上がったの。次の瞬間にはベッドから飛び起きて身体も普通に動くようになったんだけどね。テレビもついてなかったし。あれが一番怖い夢だったかもね」


「金縛りにもあってテレビに顔が勝手に映るとか絶対に心霊現象だろうが!」


「あら、金縛りは身体が疲れてただけよ。テレビの顔は夢だったのよ! だってお化けがいたら怖いでしょ!」


 嫁さんよ、お化けが怖いのは分かるが、いい加減心霊現象だって認めてくれ。

 出て来るお化けをそこまで否定したらお化けに呪われるぞ。


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