第11話 セレブの真実 ドケチ男の豪華な嘘





彼の名前は亮太(りょうた)。45歳の自称セレブで、都内にある自分の画廊を誇りにしている。彼はそこそこイケメンで、自分のステータスを惜しみなく語るタイプだ。初めて彼と会うことになった日、指定された場所は都内の駐車場。美咲は少し驚きつつも、彼の魅力に引かれ車に乗り込んだ。車内での会話はとても盛り上がり、彼は「株式投資の話」や「携帯料金をどうやって配当金でカバーするか」など、かなり興味深い話を次々と披露した。


「まあ、初回だしこんなものかな」と美咲は思いながら、彼が奢ってくれたコンビニの飲み物を手に取った。


何度かメッセージをやり取りした後、再び彼と会うことになった。彼の話題は、フランス留学時代や、父親の死、亡くなった妻との悲しい別れなど。なんとなく、美咲は自分が彼の人生において特別な存在になっているような気がした。しかし、その一方で、彼の潔癖性には少し驚かされる。「毎日シーツをクリーニングに出す?」と、普通なら考えもしない生活習慣を持つ彼の言動に美咲は戸惑う。


また、株や副業の話も頻繁にしてくる亮太だが、毎回のデートはなぜか車の中。都内に豪邸を持ち、家には住み込みのお手伝いさんがいるという彼が、なぜ外食やラグジュアリーなデートには全く誘ってくれないのかが不思議でならない。


「無駄なお金は使いたくないんだよ」と亮太は言うが、美咲は次第にその言葉に違和感を感じ始める。セレブなはずの彼が、なぜこんなにも出費を抑えたがるのか。


そしてある日、亮太が彼女に向かって軽い口調で言った。「ねぇ、今日は車じゃなくて外でエッチしようか?」

その瞬間、美咲の心の中に冷たい何かが走った。彼のセレブぶりに憧れていたのは嘘ではない。でも、目の前の現実と彼の「豪華な嘘」が次第に彼女を突き放し始めていた。


美咲は、そのまま返事をせず車を降り、静かに歩き出した。背中越しに感じる亮太の視線は重く、彼がどれほどのセレブであろうと、ドケチな現実からは逃れられないことを痛感した瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マッチングアプリ @scissorjj

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ