第2回

「だって、あの時の少年が、そのまま大きくなっただけの人が写ってたから」

「俺のこと」

「そう。すぐ分かりました」

「俺、小学生の頃から、全然変わってないってこと?」

「いたずらっ子がそのまま大きくなった感じ」

「そう……」

蒼天は、首をひねった。

俺は、ほめられたのかな?

「あの時は、私が不安にならないように、いろいろな話をしてくれたんですよね」

「そうだった。ーーあの時って、お互い名乗ったかな?」

「はい。名乗りました」

「そうか。でも君の名前、思い出せない」

「それだけ、私を守ろうと必死だったんですね」

その子は、ニコツと微笑み、「私、音無おとなし涼子りょうこです」

やれやれだぜ。

蒼天は、内心でため息をついた。

いくらなんでも、小学生の時に1度見ただけの子を、憶えてなんかないよな……。

「ーー私、この先のブティックで服が買いたいの。付き合ってくれます」

「もちろん」

と、蒼天は微笑んだ。

ーーそのころ待ち合わせをした喫茶店では、30分遅れてやって来た六本木朝美が、

「たかだか30分くらい待てない男なんか、こっちから願い下げよ!」

と、騒いでたなどとは、蒼天は知るよしもなかった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君はだれ? 北斗光太郎 @11hokuto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ