競走馬デリカダ復活への道

ハマル

【第1章】2歳新馬〜伏龍S &ライバル達のその後

 父はアメリカで重賞4勝を挙げたパイロ、母は重賞馬ラピッドオレンジの仔でオレンジピールの孫ブロンクスシルバーという血統の芦毛の牝馬は、北海道千歳市の社台ファームで生を受けた。良血なその馬はクラブの募集に回ることはなく、吉田照哉オーナーの個人所有の下スペイン語で「優美な」を表す『デリカダ』と名付けられ、吉田直弘厩舎に預けられた。

 10月の阪神ダート1800mの2歳新馬戦でデビュー。桜花賞馬エルプスのひ孫クラッシュタイムに一番人気こそ譲るも、3番手から捲りに動じず落ち着いてレースを進め、2着に3と1/2馬身差、3着には大差で圧勝。ここでライバル・カフジオクタゴンとワンツーフィニッシュを決める。騎乗した和田竜二は「攻め馬の段階から仕上がっていたし、スタートが決まったので、馬なりでいきました。外からこられてもひるむ感じがなかったし、楽しみです」と満足げに振り返った。

 そこから2ヶ月の間隔をあけ、2歳1勝クラスに出走。新馬戦と同じ阪神ダート1800mで、新馬戦で2着に負かしたカフジオクタゴンと人気を分け合い、レースでは3番手から堂々と抜け出し1と1/4馬身差で無傷で連勝を決めた。初戦に続いてコンビを組んだ和田竜二は「落ち着いて競馬に臨むことができました。勝負どころで遊ぶところがあったけど、エンジンがかかってからは伸びてくれました。2戦目で時計も詰めてくれました」と評価した。

 しかし、出走したのも平場の1勝クラス、同時期に重賞を勝ったり特別戦を勝ったりする馬達より注目度は低かった。

 年が明け、3歳になった彼女の次走は、中山ダート1800mのオープン、伏龍ステークス。こちらも無敗で、ダート界の名馬オメガパフュームの半弟ホウオウルーレットが単勝1.3倍の圧倒的支持を集め、武豊騎手鞍上のノットゥルノが4.1倍で2番人気、デリカダは3番人気ながら単勝オッズは8.1倍と低評価だった。レースは、ホウオウルーレットが逃げる展開、それに次ぐ2番手にペイシャエス、デリカダはいつもの3番手からの競馬で直線を迎える。ホウオウルーレットが期待を裏切る形で早々にバテ、ペイシャエス、デリカダ、そして捲って上がってきたノットゥルノの3頭の争いになった。そして、真ん中をとったデリカダがクビ差で制し、デビュー無傷の三連勝を飾った。3戦連続のコンビとなった和田竜二は、「この前もそうだけど、勝負どころで手応えが悪くなるのはいつものこと。でも、直線は絶対反応してくれると思った。体も増えていたし、具合も前回とは違っていた」と会心のレースを振り返った。

 しかし、このレースの後、デリカダに屈腱炎が判明。休養を余儀なくされ、幻のダート女王と呼ばれるようになった。

 なぜそうと呼ばれるか。それは負かしてきたメンバーにある。デビュー戦と1勝クラスで2着に負かしたカフジオクタゴンはGⅢレパードSを勝利し、伏龍ステークスでは出走した8頭全頭が3勝クラスまで勝ち上がり、そのうち2着ノットゥルノはjpnⅠジャパンダートダービーを勝利、3着ペイシャエスはjpnⅡ1勝、GⅢ2勝と実績を挙げている(2024年10月現在)。

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