妄想好きな引きこもり35歳の俺が赤ん坊に転生しただと? ー女神に会って特別な力を授かるイベントはお預けだったけど、案外俺にはそれなりの才能があったらしいー
第4話 赤ん坊になってから半年の月日が流れたらしい ②
第4話 赤ん坊になってから半年の月日が流れたらしい ②
俺の奇声に真っ先に反応を、示したのは母親だった。
「きゃーーー!!ちょっとなにしてんのよ!?」
(やっちまった)
悪い事をしたなと思った。
だってこんなに慌てるとは思ってなかったからだ。
相当な慌てようだ。
すぐさま俺に駆け寄って、火傷した手を心配そうな顔をして眺めている。
胸を下ろして安堵した様子に変わる。
人間の身体って案外、丈夫だしわりかし自分の身体を守ろうと瞬時に働くもんなんだ。
と、再認識させられた。
アチッってなった瞬間に、反射的にすぐ手を離したのが功をなした。
そこまでの重症にならなかった。
俺も気付いてはいたが、母親がそれを見て確認すると、ホッと深いため息を溢していた。
いやいや。
ここまでは単なる俺のミスで、俺がやらかしてしまった。
ってだけの話なんだが――。
少し違う。
火傷したらまずは冷やせ!
これが定石だと思ってたから、すぐに流し台に連れて行かれて、患部を冷やすもんだと思ってたが――。
(この人何してんの?火傷した時はすぐ冷水で冷やした方が良いんだぞっ!!)
「……
(…………ぷはっ)
おい!今なんつった?
ケアルって言ったのか?
ケアルってあの某有名なゲームの世界の回復魔法じゃねえか!?ここに来てFFネタかよっ!
やめてくれー!
萎えるぞっ!
これはなんだ?
FF14で良くある、クラフターと白魔道士で結婚しちまった。ってやつか?
と思っていたが、束の間。
まさに白魔道士みたいに、その呪文みたいな言葉の後から淡くて薄いキラキラした感じの光が見えて、消えていく。
まるでゲームみたいなエフェクトだ――。
(えっ?痛くない!!痛くなーーーーい!)
光が消えた瞬間、痛みが消えた。
嘘だろ?
「もう大丈夫よ。ったく、もうあまり心配かけないでぇ!」
今のって……、なんだ?
なんだ?なんだよっ!?
おい、答えてくれ!
なんなんだよぉぉぉ!
「ばぶぅあー」
くそっ!ダメだ。
赤ちゃん語しか話せないんだった。
「元気になったみたいね!?」
違うぞ!
そうじゃない。
そうじゃない――。
くそおぉっ!誰か俺に翻訳機持って来てくれぇ!!
赤ちゃんの気持ちが分かるっていう、そんな便利な機械無かったっけ?
――無いよな。
これ以降俺は、両親が話してる会話に、今以上に聞き耳を立てるようになった。
父親がやってる鍛治師みたいな仕事にも、今以上に眺めながら観察するようになった。
時折、父親をひいきにしている依頼人っぽい奴がやって来た時もあった。
注文してるんだろう。
「ロングソード〇〇本、……それからショートソード〇〇本、それなりに耐久性のあるので頼む!」
みたいな会話を耳にした。
(二人して厨二かよ!?)
さらに聞き耳を立てる事にした。
いや、むしろ――。
情報収集のためってのが目的だ。
何故か?
「……
が唱えられた瞬間、まるで魔法みたいなエフェクトを放って、痛みが消えた事――。
まるでゲームの世界じゃないかって?
って疑ったからだ。
ここでウルダハとかリムサ・ロミンサなんて単語が出て来たら、確定だ。と思ったからだ。
強盗に襲われて、死んだ。
だけど死んでないつうオチかもしれない。
なんなら、今いるここは、俺の妄想の世界っていう可能性もある。かもしれない――。
緊急入院して、意識不明で生死の境を
とか言いつつ、人名や地名みたいな単語が出て来るのだが、まるで違う。
俺が予想してたのとは違う。
やっぱりだ――。
いや、これはアレだ。
俺はやはり異世界転生したらしいな――。
断言しても良い。
剣とか魔法とか出て来ちゃう、日本とは全く別の世界に来てしまったらしい。
それも赤ん坊から再スタートってヤツだ。
その上、父親は鍛冶屋だ。
良いぞ!
悪く無い。悪く無い。
まるで良くある異世界転生ものだが――。
こういうのは大好きだ――。
ワクワクする。
赤ん坊に転生。
それにしっかりと成長も感じられる。
別に赤ん坊に転生して、ずっと赤ん坊って訳ではなさそうだ。そこは安心だ。
って事はだ――。
俺に舞い降りた、待望の『セカンド・ライフ』がやって来た!
って事だ。
良いぞ!俺――。
童貞を卒業するチャンスだ。
もう無理ゲーだと思ってからな。
こんな展開でこんなチャンスが巡って来るなんてな!
良しっ――!
この世界で大いに俺の息子を活躍させて、成長したらきっとイケメン確定フラグなんだから、少し本腰入れて人生ってヤツに少し本気で挑んでやる!!
妄想好きな引きこもり35歳の俺が赤ん坊に転生しただと? ー女神に会って特別な力を授かるイベントはお預けだったけど、案外俺にはそれなりの才能があったらしいー ピコ丸太郎 @kudoken
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