第3話

まだ少し泣きぐずる少年が母親に付き添われて担架で運ばれるのを見送ったあと、

俺は、しばらくの間運休になった電車の運転再開を待つため、改札に戻ることにした。

道すがら、無意識にさっきの女性を探してしまう。


改札を出たところで立ち止まり、頭がまとまらないまま、近くのベンチに向かおうとした瞬間、突然足が重くなったのを感じた。魔法を使った時の体が重くなる感覚に似ている。

俺は思わず足元を見る。駅の床はきれいに磨かれ、光沢にうっすらと自分の顔が映っている。

突然、目の前が一瞬だけ暗くなる。錯覚かと思ったが、再び何回か一瞬だけ暗くなる。

そして、駅の中の明かりがすべて消えた。

驚きの声が周囲から上がり、みんな一斉に天井を見上げる。停電だろうか?

俺もつられて上を見上げようとした時、胸のポケットのスマホが震えた。

直後に、コンコース全体にサイレンのような警告音が響き渡る。

慌てて、スマホを取り出して画面を見ると、地震の発生を知らせる警告が表示されていた。

周囲の人々も次々とスマホを取り出し、不安そうに画面を見ている。


間もなく、床がかすかに揺れ始めた。その揺れは次第に大きくなり、悲鳴があちこちで上がる。

駅全体が大きく揺れた後、突然、揺れがピタリと止まった。

しばらくして、駅内の照明が再び灯る。俺は、気持ちを落ち着かせようと空いているベンチに腰を下ろした。

周囲では、人々がさっきの地震について口々に話し合っている。

数人の駅員が慌ただしく走り回り、その後、運転見合わせのアナウンスが流れた。

発車案内板に「全線不通」の文字が映し出され、運転再開の目処は立っていないらしい。


俺は電車を諦め、少し離れた地下鉄の駅に向かう。駅の出口に歩き出したところで、

不意に後ろから声を掛けられ、振り返る。


そこには、全く見覚えのない二人の男が立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パスファインダー イガゴヨウ @arutonike

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ