キリトリセカイ

キリトリセカイ

　――イマノアナタのメニウツルノハ。

　――シンジルに足るものなのでしょうか？

　産まれが違う。育った環境が違う。見るもの聞くこと……それぞれが違う……。

　個は群に紛れ、相対的に全体の雰囲気に合わせる事を覚え、「個性」は掻き消されて均一化されて行く。マイノリティはマジョリティに駆逐され、オーソリティによって改変されて、間違った偏見と同情を与えられて、歯車はずれて軋みを上げていく。

　――いつから、こんな歪な世界になったのだろう？

　人権、権利、義務、道徳……。フェミニズムにリベラル、道義や理論を振りかざし、何が正しくて何が間違っているなど、どうして個人が言えるのだろう？　世界中には様々な『法』が存在し、個々に独立している。各々が正しいと信じると決めたそれですら、国が違えば「違法」なのに。

　『情報』が溢れ、瞬時に色々な事を知れるようになった今。今この時ですら、その情報に振り回され、偏った情報だけを信じてより傾いていく。

　――セイギ。

　――タイギ。

　――そんなの全部言い訳で、只々見下ろして居たいだけ……。

　真に何かを守りたいなら、それは言うべきことじゃない。真に善き行いをしたいなら、それを見せるべきではない。

　マコトにヒトを愛すなら……見返りを期待してはいけない。

　自分は出来もしないのに、大言壮語を吐くカリスマ。

　出来ることは小さいでしょう。だけどそれこそ最初の一歩なのです。

　――だって、日々は続いていくのだから。

　切り取られた世界の中で、キミの思うことを大切に。大事なことを諦めず、ゆっくり小さく少しずつ……。今はただの砂粒でも、集めて固めて磨いて行けば。きれいな泥団子には出来るから。生きていく事は綺麗事じゃない。生臭くて、ドロドロしていて、みっともなくて……。

　それでも。

　例えキリトラレテイテモ。

　――キミがされて嫌なこと。キミがされて悲しい事。キミが辛いと思うこと。

　それを誰かにしなければ。

　誰かもいつかは気づくはず。

　例え、気づいてもらえなくても。

　――その時キミは胸を張れるのだから。