第二章  人に教えるために

 俺が有栖川の講師として働き始めて3日、大体のノウハウは理解してきたが、一つ大きな問題があった。

 「あいつの考えが読めねぇ、、、」

 そう、あいつの考えが読めないのだ。

具体的には、有栖川の間違っている問題を見ても、大体完璧に合ってるか最初から間違えてるかの2択になるのだ。

 後者の場合なら、やり方を教えればいいだけだが、前者が続くと俺のやることがない。

 「ハァ、、、」

 俺は溜息を吐きながら目の前の晩飯にありつこうとする、と、

 「いただきますは?」

 と注意されたので、素直に       「いただきまーす!!」

 と耳をぶち壊すくらいの音量で感謝を述べる。

 そんな俺のギャグを無視して、

 「んで、何があったの?」

 と聞かれる。心の声が聞こえていたか、、と思い、自分で言っていた事を思い出す。

 「人に教えるのって、難しいよな、、」

 「あら〜そんなの簡単よ、スパルタよス  パルタ。分からない事は気合いで教えんの  気合いで。」

 「んなもん一歩間違えりゃ訴訟待ったな  しやん、、」

 と、このアホみたいな掛け合いをしている相手というのが、夢宮葵。俺の隣の家に住んでいて、幼馴染。お互いに両親がいないことがほとんどなので、一緒に飯を食っている。

 まあ、作るのは葵だが。

 ボケる時は死ぬほどボケるが、頭はいい。俺に勉強を教えた人であり、全国模試一位とか言う狂った記録を出しているのもこいつである。そんな葵になら、人に教えるコツをご教授願えると思ったのだが、、

 「真面目にさぁ、教えてくんない?俺  困るよぉ、人に教えたことなんてな  いもん、、助けてあおえもーん!!ま  た有栖川にいじめられたよぉ!!」

 「うん、とりあえず変な情緒はやめ ような?私だってな?コツがない訳で は ないよ?けどそんな頼み方じゃなぁ、」

 と、なにか物欲しさげな態度は、普通の男子高校生なら1発で惚れているだろう。だが、俺は違うね!こいつのことを3歳から見てきている俺なら分かる。俺に精神的屈辱を与えるためになにかしにくるに決まってるのさ!

 まあ、そんなの知っていても回避することは不可能なので、いつもの言葉を言い、やる気にさせることにする。

 「葵さん葵さん、何でもするので僕に  お恵み頂けませんか?」

 「んん?今何でもするって言ったよね?  言ったよね?」

 あ、やらかした、と思った頃にはもう手遅れだった。

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何故か隣にくるツンデレ小悪魔系美少女は、俺にだけデレる。 田村氏 @tamu0526

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