リバース・クロニクル〜ideal world〜

野乃々 アカッシー

第1話勇者の誕生

なんだか嫌な夢を見ていた気がする。ただ、それがなんなのかは思い出せない。いや、思い出したくないのかもしれない。


「いてて…………」


周りを見渡すと辺り一面草が広がっていた。


「ん?ここはどこだ?俺は何をしていたんだ?うっ、思い出そうとすると頭が痛い」


そう考えているうちにひとつの事に気づいた。俺は記憶喪失をしている。ここがどこなのか全く分からないし、今まで何をしていたかも分からない。分かるのは精々自分の名前くらいだ。


「どうしたもんかなー、とりあえず適当に歩いてみるか」


グギャギャギャ


「なんか変な音がするな…」


振り返るとそこには3mくらいの緑色の化物がいた。


「ひっ」


あんなの勝てるわけない!逃げなきゃ!


「ぐはっ」


何が起こった?俺は殴られたのか?いたいいたいいたいいたい!何も分からないまま死ぬなんて嫌だ!誰か、誰か助けてくれ!!!


「大丈夫か!?今回復する!」


その女性は颯爽と現れ目の前の化物を剣で真っ二つに切った。そして俺の傷を一瞬で回復してみせた。


「あ、ありがとう。助かったよ」


「いえ、礼には及ばないよ目の前で困ってる人を助けるのは当然だからな。ところで君は何故こんなところにいるんだ?」


「それが、まったく思い出せないんです」


「そうだったんだな………私に着いてきてくれ、ここは魔王軍のナワバリでとても危険だからな一旦街に戻ろう」


魔王軍?なんだそのいかにも危なさそうな名前の軍は


「あの……魔王軍ってなんですか?」


「そこらへんについては後で説明する。すぐに街には戻れるからな」


辺り一帯草だらけなのにすぐに戻れる?どういう事だ?


「テレポート!」


「うわっ」


眩しい光が俺を襲った。目を開くとそこはとても大きな街だった。


「さぁ着いたぞ。ここはリバーエンド最大の都市ルクリアだ」


これはすごい。色々な出店があって、様々な人達が意気揚々としていて賑やかだ。まるで今さっきの光景が嘘のように。


「感動してるとこ申し訳ないが王様の所まで着いてきてくれ」


「王様ですか」


「あぁこの世界の王様だ。王様は観察眼を持っていてな見ただけで色々なことが分かってしまうんだ。だから君の素性とかも分かる」


観察眼、いかにも凄そうだ。


「分かりました。着いていきます。もしかしたら何か思い出せるかもしれないですし」


「じゃあ行こうか」


歩いてる最中俺は様々なことを聞いた。この人はリースさんと言って近衛騎士団の団長をやっているとんでもない人だった。またこの世界はスキルというものがあるらしい。リースさんのスキルは空間支配というらしい。俺にもあるのかな?そして今この世界リバーエンドは突如現れた魔王によって世界を支配されかけているらしい。そんな魔王に対抗するべく勇者召還というものを行ったみたいなのだが、勇者が現れなかったそうで近衛騎士団が各地へ行き勇者に相応しい人を探していたそうだ。国民の不安を和らげるためにも勇者という存在は必要みたいだ。そんなこんなリースさんと話してるうちに王様の部屋の前まで着いた。


「ここが謁見の間だ。くれぐれも変な真似はするなよ?」


そんな不敬なこと俺に出来るわけがないが、ちょっとやってみたいと思ってしまった。


「しないですよ………多分」


「お前案外調子が良い奴だな。まぁいい開けるぞ」


おぉこれが謁見の間か。キラキラしててちょっとやだな。


「リースご苦労だった。下がって良いぞ」


「はっ」


リースさんかっけぇ!いかにも団長って感じだ。


「さてアルト君早速だけど君のこと見させてもらうね」


俺の名前を知っている!?観察眼ってすごい


「は、はい」


そんなにジッと見つめられたらドキドキしちゃいますよ王様!


「あ、アルト君。君の強奪っていうスキルとてつもないスキルだよ」


強奪、なんか聞いた途端嫌な気分になった。


「どんなスキルなんですか?」


「相手の死体からスキルを奪い取るスキルだよ」


やっぱり俺はこの能力について何か知っている。記憶を失う前の俺に何か関係するのか?


「あ、あの!その他に俺の生い立ちとかについて何か分かりますか?」


「それが君のは何も分からないんだよねぇ普通は分かるはずなんだけどなぁ」


「………そうですか」


「アルト君すまないね。だが1つだけ君が記憶を戻す方法を知っている。聞きたいかね?」


「そんな方法あるんですか!?教えてください!」


「それは魔王を倒すことだよ。魔王を倒すと女神様が願いを1つ叶えてくれるんだ。そこで君に提案なんだが勇者にならないか?」


「やらせてください!記憶を戻すためならなんだってしてみせます!」


「そう言ってくれると思ったよ。泊まるところもないだろうし今日はもう客室でゆっくりしてくれ」


「分かりました!」


今日アルトは思いもよらない展開で勇者となったのだった。














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