第2話 病室にて①
「ここは…」
目が覚めると、俺は真っ黒の部屋にいた。
文字通り、部屋一面真っ黒。
眠っていたようだ。身体がだる重い。
俺は身体を起こそうとする。
「…!?」
動かない。
首を起こして身体の状態を確認するが、何かに縛られているわけでもない。
「気がついたかい?悪いけど目眩しと捕縛魔法を使用してるよ」
急に女性の声が聞こえて驚いた。驚いたが声の主の姿を確認できない。
目眩し?そうか、部屋が真っ黒に見えたのは目眩しの魔法を食らっているからだ。
…ん?魔法?
「悪いが、これか君にいくつか質問をさせてもらうよ」
今度は男性の声が聞こえた。どうやらこの部屋には俺の他に2人いるらしい。
「質…問…?」
「そう、我々は治安局だ。これから君が関わった犯罪について聴取させてもらうよ」
「…犯罪?」
「そう、君がグループの一員となって起こした詐欺についてだ。」
「喋りすぎだベイン曹長。…さて、まずは君の名前から聴かせてもらおうか?」
「名…前…」
「そう、名前だ」
「…りません…」
「え?」
「わか…りません…」
俺は俺が誰なのか全く分からない。
状況も何もかも憶えていない。
そもそも何で病室にいるのだろう?
「…魔法?詐欺?一体何のことだ?」
いくつもの情報が真っさらな頭に入り込んでくる。そのどれもがクエスチョンマークだ。
「困ったな、記憶喪失か」
「これじゃ、自白魔法使えないっすね」
「…ベイン曹長」
「…!失礼しました!」
俺を尋問しようとしている2人はどうやら慌てているようだ。
「それなら、まずは君の記憶を呼び起こすとしよう。」
パラッと紙を捲る音が聞こえた。
何か俺に関する資料を持っているのだろうか。それとも詐欺に関する資料だろうか。
「君たちが1番最初に起こしたとされる犯罪、これを見て何か思い出したことがあれば言いなさい。」
真っ黒の部屋に突然一枚の紙が現れた。
そこにはこのように記されていた。
『【オリハルコンメイル詐欺事件】
場 所:南都オーツ区
被害者:ゴメス=ゴールドスタイン
被害額:10億ゴールド相当のオリハルコン』
その時、頭の中に鈍く鋭い痛みを感じると共に、一筋の情報が湧き出てきた。
そうだ…俺はあの日あの時…
異世界詐欺師〜転生した高校生が嘘を見抜くスキルで詐欺師となって異世界を騙す物語〜 著弧くろわ @maplelove
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