異世界詐欺師〜転生した高校生が嘘を見抜くスキルで詐欺師となって異世界を騙す物語〜

著弧くろわ

第1話 あの日あの時

「本当なんですか!?あのガキがぁ?」

東都のとある大病院、そのとある病室に向かう廊下で、ベインが驚嘆の声を上げた。


「静かにしなさい、ベイン曹長」


前を歩いていたブランド髪の女性が振り返りながらベインを咎める。

そのまま止まることなく、すぐさま軍服を翻してつかつかと歩みを進める。


「…こりゃ失礼しました、ライ中尉」


ベインはバツの悪そうな笑みを浮かべ、ライの後を追う。


「でも驚きっすよ。あの少年まだ魔術学校4年生くらいじゃないっすか?そんな歳であんなことが…」


「虎は生まれた時から虎なのよ、曹長」


「…?」


「…要するに年齢は関係ないってこと。」


きょとんとしたベインを察してすぐに補足を加える。

そうしているうちに目的地に辿り着いた。


「ここに一級犯罪魔術士がいるってことですか…」


ベインは唾を飲み込む。彼にとって、一級犯罪への対応は治安局に配属となってから初の大仕事だった。


「…正確には違うけどね。彼は魔術士登録していないもの。」


ライはため息混じりに手元の資料に目を通す。

ベインもつられ上司の行動に倣う。


『連続詐欺における国家反逆罪成立の妥当性』


と書かれた見出しの資料をめくると、幾つもの事件が記載されている。

貴族や小国の令嬢、魔術師学校に上級魔術士。数々の詐欺の被害者も記載されている。

特に大きな事件は4大貴族のヴァーミリオン家の詐欺被害を原因とした没落だ。

これで国家の治安局が本格的に始動した。


未だかつて起こり得なかった国家を脅かす勢いを持った詐欺行為である。


おそらく、治安局が把握していない貴族への詐欺もあることだろう。


『グループによる犯行可能性』


そんな一文も記載されている。

その大規模犯罪を起こしたグループの1人が目の前にいる。


治安局2人の顔がわずかに強張る。


「失礼します。」


ライが病室の戸を開けた。






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