糞尿は偉大なり

加賀倉 創作【書く精】

糞尿は偉大なり

 糞。またの名を大便。


 大便を見れば、体調の良し悪しがわかる。例えば『下痢』は、体調不良の指標として、わかりやすいだろう。


 他にも『色』の変化というのもある。


 黒い大便。


 黒い大便が出る場合、食道、胃、十二指腸、小腸などの消化管で、何らかの原因により出血が起こっていることが十二分に考えられる。


 消化管からの出血があると便が黒くなるのは、体表を怪我した時の出血が凝固して、赤黒い瘡蓋カサブタになることから、容易に想像できるだろう。少し細かく言えば、血液の赤血球中の呼吸色素『ヘモグロビン』が、各種消化液などにより酸化したものが大便に混じり、赤黒くなる、というわけだ。


 だが、必ずしも黒色が悪いというわけでもないのが難しいところだ。


 貧血用の鉄剤や、消化性潰瘍や胃腸炎の治療に使用されるビスマス製剤によって便が黒っぽくなることもある。やむを得ずそういったものを摂取する場合は、便が黒くなっても仕方ないのかもしれない。




h・h・h・h・h・h・h・h・h

p・p・p・p・p・p・p・p・p

h・h・h・h・h・h・h・h・h




 次に、尿。またの名を小便。


 小便を調べれば、体調の良し悪しがわかる。


 調べる、というのは、どういうことか。


 『pH』を測るのだ。


 『pH』、覚えているだろうか。ピーエイチ、とかペーパーとか呼んだりする。 


 これは余談だが、最近はピーエイチが主流のようだが、昔はペーパーとドイツ語のアルファベット発音方式で呼ぶことが多かったらしい。それはおそらく、明治期に大日本帝国が取り入れた洋医学が『ドイツ医学』だったことに起因しているのだろう。


 『pH』は、一から一四の値で示され、七が真ん中で中性、一に近いほど酸性、一四に近いほどアルカリ性、というやつだ。


 では、小便の『pH』を測るとは、どういうことか。


 ここでは、こう言い換えたい、「小便がアルカリ性寄りかどうかを調べる」と。


 小便の『pH』を、一日で五回ほど、リトマス試験紙などで測定し、その内一回でも中性の七か、七・一とか、それくらいの値が出れば、体内環境は良いと言っていいだろう。


 ではなぜ、小便が酸性ではないアルカリ性寄りであることが、良いと言えるのか。


 小便の元の姿は、体液である。体液は腎臓でされ、尿として体へと排出されるものである。


 体液であれば、『pH』が七・四前後の弱アルカリ性の状態であることが望ましいと言われている。


 小便になった時点ではそれよりも小さい値の『pH』七から七・一で良いと、弱アルカリ性を推す上ではやや甘めな設定をしたのには理由がある。


 小便という排泄行為により、体では不要な余分な酸性物質が体に排出されるわけで、体液として存在する時よりも酸性寄りになってしまうことは、避けられないのだ。だとしても、できるだけ酸性寄りに傾かないように、するべきなのだが。


 体液は弱アルカリ性の状態が良いという最大の理由は、酸、ひいては酸素というものは、元来多くの生物にとっての毒であるから、である(古来、生物たちは、地球に溢れる酸素という毒を仕方無しに、使えるように進化した)。


 酸・酸素が毒であるのかを示すわかりやすい証拠は、「現代人の最大死因の一つ『癌』を担う癌細胞はアルカリ性環境よりも酸性環境を好む」という事実にある。


 逆説的に言えば、体内が弱アルカリ性に寄れば、癌細胞のような、まるで宿主をむしばむスパイのような細胞が蔓延はびこることを、大きく抑えることができる。


 現代人は、ひどく酸化した揚げ物やジャンキーな食べ物をおびただしいほどの量、摂取するが、だからこそ体が過度な酸性環境に無理くり作り変えられ、癌になりやすくなるのである(もちろん癌の増加要因は実際にはもっと多様で複合的である)。


 そして「弱アルカリ性であることが望ましい」というのは、あくまで体にある体液の話であり、体表だと弱酸性、胃の中は強酸性、その他消化管も酸性寄りの環境であることが多かったりする。


 というのも、病原菌のような部からの侵入者に対しては、『酸性』というフィールドで戦いに臨み、酸で倒すのが、手っ取り早いのである。


 一方で、体の癌細胞に対しては、『アルカリ性』。


 大事なのでもう一度言おう、外は酸、内はアルカリ。


 よくある誤解だが、胃や腸というのは体というよりも『体』といった方が、本質的には正しい。口から肛門にかけての消化管は、それを一本の筒と見做みなせば、それは高層建築物の構造内にある、風通しの良い『吹き抜け』のようなものなのである。つまり消化管は本質的には体であるから、体表という体と同じく、酸性に傾くように設計されているというわけだ。


 ここまでで、なるほど体液は弱アルカリ性である方が良いのだから、体液から作られる尿も同様にアルカリ性寄りであるべきなのだな、と理解していただけたように思う。


 仮にそうだとして……




 今自身の体液がもし酸性寄りである場合、どうやって、アルカリ性寄りにすればよいのか? 




 その方法は、ぜひ一度、ご自身の手で、調べていただきたい。


 こうして、肝心なところを敢えて放り投げるのには、大きな理由がある……


(もし需要があれば、続編を出すかもしれません)

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