26品 花の女神
給食着パーティーが終わったのは深夜近くであった。片付けはミーティア先生も加わって皆で行った。フェリーチェは眠たくて堪らず、大きな土管の中で眠りこけていた。クラスメイトはハイになっていて、眠たいのとまだまだ遊びたい欲がせめぎ合っていた。
「早く寝るんだよ。おやすみ」
ミーティア先生はフェリーチェを回収して、彼らを見送った。彼はフェリーチェをおんぶして歩き始めた。
「ねえ、フェリーチェ」
彼女は溶けきった声で返事した。
「ふふふ、生きているって素晴らしいね」
「うん……明日も……みんなといっしょ……」
ミーティア先生はこくんと頷いて、明るい街灯に負けない月を見上げた。
ミーティア先生はあの日の夜を思い出す。全世界楽園計画本部のエリーエリーとヴァイゼルから緊急で呼び出されたあの夜を。彼は闇魔法で転移すると、ボロボロの彼女が地面に倒れていた。彼女は全てを終わらせた後、気を失い、地上へ落ちた。
エリーエリーは彼女の名前を呼びながら魔法の絵筆でいくつもの傷を塞いでいた。「彼女の体に絶対に傷を残さない」と涙でぐちゃぐちゃになっても強い意志を感じさせた。ヴァイゼルは他の神族たちと、楽園本部全体が眠っている間に神の宝石を奪還すべく走り回っていた。ミーティア先生も混乱した状況で頭がぼんやりしていて、ピクリとも動かない彼女に触れていないのに、冷たいんじゃないかと背筋がヒヤリとした。
「こんなに小さくなって……力を使いすぎたんだ」
ミーティア先生は彼女の手を握り、彼女の枯渇しそうなマナエネルギーに自分のエネルギーで補給させる。自分の持つ大いなる闇のエネルギーを苦手な生命エネルギーに器用に変えていく。
「あんな高い大樹から落ちてきても体は傷だけに留まったんだ。エリーエリーは自分の力を信じて」
ミーティア先生は錯乱しそうなエリーエリーに声をかけて励ました。
彼は後にヴァイゼルから聞いたが、天空から落ちてくる彼女を、
「このままだと死んでしまう」
と結構な神力と気合いで地上まで無事に送ってくれた二柱がいた。花の女神のサクラとシュヴァルツ・ザーメン・グラース大佐であった。二人は口を揃えて、
「彼女には言うな」
と女神の港町に引き返したらしい。何も知らないフェリーチェは今日も疲れたら、おんぶして帰ってもらえればいい、とそんな悠々自適に過ごしている。
フェリーチェのおまじない屋さん にと◎にとべ @nitobe1205
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