25品 花祭りのカーテンコール

 今年の花祭りは終わった。夕方の5時に終わり、ミーティア先生はフェリーチェを連れて、設営の片付けを手伝った。狂犬シルバーが黒いキャスケットに花のないトゲトゲの茨をつけていて、大変尖っていたという噂が流れていた。また、もう一つはフェリーチェの花占い。売り込み方がイラッとくるが、珍妙な占いをすると評判を得ていた。

「うちの子すごいでしょーう?」

 とミーティア先生は得意になって、フェリーチェの自慢ばかりしていた。フェリーチェは余ったギャザーキャップの使い道を考えていた。クラゲみたいだからクラゲとして飼ってみようかな、とミーティア先生に相談したら、

「空に返しなさい」

 と自慢の子モードから教育パパに戻って却下された。

「じゃあ、給食センターに寄贈するとしますか」

 とフェリーチェは給食を作るお姉さんがいないか呼びかけたが、この場にはいないんだそうだ。代わりに給食の毒見係の女子が受け取ってくれた。フェリーチェが使用したギャザーキャップを後で宝箱に入れた。


 フェリーチェが花占いに使った鉢植えは自宅に持ち帰る。エメちゃんとエミコちゃんは晩餐会とパーティーの準備で正午過ぎた頃には帰ってきていた。レイくんもいつも通り寛いでいて、ミーティア先生に、

「青い薔薇の茨、受け取ってくれたんですよ!すっっっごくピキピキしていました!」と怒った婚約者が可愛いと笑顔で報告した。ミーティア先生もいろいろと評判になっていたことを教えてあげた。フェリーチェはお風呂に入りに行った。

 フェリーチェは給食着を着て、レイくんの元に戻ってきた。次はミーティア先生がお風呂で退出する。

「とっても似合いますよ、王。そのお姿で花の植え替えの作業をしていた話は、あちこちで聞いていました」

 レイくんは行儀よく膝に手を置いて慈悲深く微笑んでいる。

「お前はボロボロアーケードの裏番長としてよく頑張りました」

 フェリーチェはレイくんの額にデコピンをしてあげた。彼は感謝すると共に心配もしていた。

「機械人間を暴いたあと、何か変わったことはありませんか?」

 と聞かれたが、フェリーチェは思い当たる節がなかった。

「ミーティア先生がしっかり守っている証拠ですね」

 レイくんは婚約者とそういう関係だったらずっと一緒にいられるのに、と羨ましく思った。エメちゃんとエミコちゃんはシャワーだけ済ませて、レイくんも混じえて晩餐会を始めた。レイくんは聖職者らしく感謝の祈りを捧げた。


 それから一時間後に、フェリーチェはミーティア先生の持っている土地でクラスメイトと給食着パーティーを始めた。フェリーチェの家で用意した大きなスポンジが、いつの間にか設置された大きな土台の上に置かれ、クラスメイトは持ち寄ったものでスポンジをデコレーションしていく。

「私、今日、誕生日なの!」

 とプリエラが勇気を出して、大きな声で注意を引き付けた。「おめでとー」とまばらな祝福が返ってきた。しかし、その祝福だけで藁人形の呪いは解けないだろうな、とフェリーチェもお手上げだった。1月5日生まれのコギャルがフェリーチェに贈り物をする。

「姉のランコの件、お世話になったから」

 とお菓子を渡され、

「大事に食べるよ」

 とフェリーチェは応えた。それからコギャルは「花占いやって」と500マネを出したところ、評判を知っている他の子たちもフェリーチェを囲った。

 余興が終わった所で、フェリーチェの素敵な大魔法使いが遊び心で搭載した、給食着の最後の機能を見せる時が来た。見守っていたミーティア先生が拍手し始めたら、クラスメイトもつられて拍手した。

 フェリーチェの給食着は拍手に呼応するように光り輝き、光の花となってパッと粒子となってなくなってしまった。それから愛待ち街に赤い花が降り始めた。わっと街中が歓声で揺れた。フェリーチェは宙に舞う花弁を摘んで、「薔薇」と呟いた。

「ある夜に思いついたんだ。フェリーチェは青い花が似合うけどね」

 とフェリーチェはミーティア先生の手を握ってしばらく夜空を見上げた。

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