24品 時計
フェリーチェは花占いのために歩き回り、ちょっと疲れた。中学の実力テスト合宿では永遠に走り続けられたのに。その疲労がまだ足に蓄積されているんだと本人が言い訳する。
「昼休憩しようか」
とミーティア先生の提案を聞き入れた。フェリーチェは花占いでたくさん稼いだお金でレインボーフルーツ飴を買った。二人は処刑広場の噴水に座って、遠くから花の乙女コンテストを眺めていた。
「ミーティアくんってどんな女性が好み?」
フェリーチェの目は乙女たちに向けられていた。ミーティア先生は何人もの女性から好みを聞かれてきたから事前に答えを用意していたが、フェリーチェに聞かれると困る。ミーティア先生の言葉の詰まり具合に、彼女は珍しそうにしていた。
「ミーティアくんと世間話するアイボリー先生曰く、ミーティアくんは遊んでいないらしい」
それを聞いた本人はクスッと笑った。
「異国情緒サラマンダー部のランラン先生が、隠し子がいないか聞くように頼まれているんだ」
それを聞いた本人はクスクスと笑った。
「世界超常現象調査隊のロクサレヌ先生が研究ノートを見せてくれて、わたしの前世を聞いてきた。わたしの前世ってなんだろうね?」
それを聞いたミーティア先生はフェリーチェと一緒に首を傾げた。
「カミエーリヤ先生が散歩道のバリアフリーを目指すために車椅子に乗りたいから、ミーティアくんに押して欲しいって」
それを聞いたミーティア先生は申し訳なさそうに首を横に振った。
「アステル先生が、ミーティアくんの仮面が気に食わないってトイレで陰口叩いていたよ」
それを聞いたミーティア先生は正面で言って欲しいとムッとした。
「シフォン先生から聞いたよ。わたしの可愛い部屋着やパジャマって全部ミーティアくんが揃えてくれたらしいね。ありがとう!」
それを聞いたミーティア先生はポッと顔を赤らめた。
フェリーチェはふと真剣な顔になって、ミーティア先生の大きな手を握り、
「今、時計、動いている?」
と聞く。それを聞いたミーティア先生は、サングラスの下で目を細めて、
「動いているよ」
と答えれば、フェリーチェは満足そうに頷き、
「じゃあ、好みとかそういうのは聞かないよ」と手を離そうとしたが、ミーティア先生の手に絡み取られてしまった。
「落ち着くからこのままでいてね」
とミーティア先生は悪戯っ子のように微笑んでいて、フェリーチェも眩しいものを見るような笑顔で頷いた。
フェリーチェとミーティア先生の二人だけの世界を目の当たりにしたララミー。親友のアナと一緒だった。ララミーはもう一人の親友エブリが花の乙女コンテストに出ているため、ちょうどいい席を探していたところ、ミーティア先生の彼女に対する積極的な姿勢に胸がザワザワしていた。てっきり、花祭りはルティ「ちゃん」と行くのか、と思っていたから。アナは動揺する親友を心配したが、
「別になんでもないわ」
とララミーは強がって席探しを再開した。
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