最終章 悪が消えた世界で
「…発表いたします!第16回、学生ゲーム制作コンテスト、優勝作品は、『フェアリープリンセス物語』ですっ!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉ!やったああぁぁぁぁぁぁ!」
日本のとある会場で、恵里菜たちは称賛を受けていた。彼女たちが制作した同人ゲームが、優勝作品として選ばれたのである。
「恵里菜さんのイラスト、まるで絵本のようなイラストで、プレイしていて楽しかったです。ただの萌え絵にはない、暖かみのある世界観でした」
「ゲームバランスもしっかり練られています。難しすぎず、かといって簡単でもない、絶妙な難易度でした」
「・・・やったな、恵里菜」
「はい」
あのあと、自ら命を絶とうとした恵里菜は、なんとか意識を取り戻し、無事に退院することができた。そして、かつての仲間たちと共にゲーム制作に励み、そして優勝した。
「秋原さんっていう神様に、感謝しないとね。あの人が励ましてくれたから、退院できたから」
「そうだな」
ある日、恵里菜の仲間の祈りが通じたのか、病室にいる恵里菜の脳裏に、秋原の声が響いた。
「きみのイラストを見させてもらった。きみは将来有望なイラストレーター、シナリオライターだ。失うわけにはいかない。きみのことを虐めていた真理愛のことは、ぼくがなんとかする。だから、目覚めてくれ。そして、多くの人に感動を与えてくれ。きみには、それができる」
「…真理愛さんのことは任せてくれって言われたけど、真理愛さんって、どうなったんだろう。行方不明になった、としか聞いていないけど…」
「恵里菜を虐めていたやつのことなんか、気にすることないさ。それより、次回作のことを考えようぜ」
「…そうだね。やっぱり、イラストを描くって楽しいね!」
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「…まさか、クレスタ王子が、私の薬草農園で働いてくださるとは」
卒業パーティ後、クレスタ王子は宣言通り、王位を腹違いの弟に譲り、城を去り、エリーナの薬草農園で働くことになった。田畑を耕し、土で服を汚す毎日だが、クレスタ王子は常に笑顔で働いていた。
「エリーナのことを守りながら生活できるならば、こんな汚れ、たいしたことはない」
「さあ、ブルーベリーパイができましたよ」
「あ、お母さん。…食事にしましょう、クレスタ王子」
「ああ。ありがとう、ご婦人。いつも温かくておいしい料理を提供してくださって、ありがとう」
彼らは笑顔で食事の席に座った。
これからも、彼らは暖かい生活を続けていく。
秋原が書いた物語は、そういう設定なのだから。
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暗い海の底に、マリアンヌ――否、真理愛はいた。
「ちくしょう…許さない…恵里菜…秋原…!!」
溺れ死んで亡霊となったマリアンヌは、海底に縛り付けられた。これも秋原が書いた物語の設定なのだろう。
「ちくしょう…ちくしょう…
チクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウ
チクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウ!!!!」
暗い海の底で、真理愛の怨嗟の声が響く。
彼女は、日本に帰ることはおろか、地上に出ることもできない。王子の婚約者としての地位を失い、かつての友も失い、命も失った彼女は、永遠に、この暗い海の底で暮らしていくのだ。恵里菜に、そして自分をこの世界へと強引に連れてきた秋原という男に対して、恨みの言葉を吐きながら。
「許さねぇぞ・・・秋原…恵里菜…キモいアニオタ…
呪ってやる・・・呪ってやるううううぅぅぅぅぅぅ!!!
ノロイノロイノロイノロイノロイノロイノロイノロイノロイィィィ!!!!
シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネェェェェェ!!!
アニオタアアアアアアアアアアアあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあああ!!!!」
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悪い奴に幸福は訪れない。
いじめは、やめようね。
by 秋原 清人
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仕組まれた異世界転移 ~悪役令嬢という名の牢獄~ 上村瑠璃 @kamimurarui2
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