第10話 獣王国辺境の地、アルマジーロ
「ふっかぁああつ!」
今回は一日ぐっすり寝たことで感知させたモーヴ。
そろそろあることに気づく。
「こいつの【保存】のスキル、便利すぎるだろ!」
体内の健康な細胞を強制的に【保存】させ、生きながらえさせたのだ。
他にも食事や魚などの品質保存、必要な記憶(地図とか情報とか)の保存。武術・魔導などの術理保存などなど、チートかよ!と思うぐらい鎌瀬の感覚だと便利なのだ。
「……アゲ姉御に迷惑かけちまったな…」
パパメルトとの戦闘時、アゲ姉御の肩に大怪我をさせてしまったのは不覚中の不覚。
戦術や技法だけではどうにもならないと実感する。
「俺も強くならねぇとな…いや、」
自分だけが強くなってもいずれは弱い仲間を狙われたり利用されたりするだろう。
「せっかくの仲間だし、ちょっとくらいなら地獄を見てもらってもいいか!」
――――――――――――
「よっしゃーいつの間にかミッションも達成してたし順風満帆だぜ!」
「いやぁ〜ん!いきいきモーヴ様かわいい〜」
「
「いやぁモテモテでおじさん羨ましいねモーヴ」
「さてと、ちょっと話を聞いてほしいんだけど…」
パンと手を叩くモーヴは真剣な趣きでアゲポヨとセーソに話しかける。
「パパメルトのおっさんはともかく、二人ははっきり言って弱すぎる」
「そんな事言われても!私だって頑張ってるし…」
「酷いモヴヤック様〜私泣いちゃう(上目)」
「そこでだ(無視)、二人には俺のトレーニングメニューをこなしてほしい」
「「トレーニングメニュー?」」
「おじさんにはないの?」
「おっさん今の俺より強いんだから俺と組手でもしてりゃいいだろ。とりあえず俺が見本を見せるから時間が許す限りやってくれ。まずアゲ姉御―――」
モーヴが
だがただの瞑想ではない。
「魔力が大きくなったり消えたりしてる…スゴ…」
魔力の強く放ち、その後抑え込む。
コレを往復する事によって魔力の許容量を高めることが出来る。
すなわち魔力の筋トレといったところ。
「俺は朝起きて1時間はやってるが、始めからそんな事すると廃人になるから、まぁ10分くらいから始めてくれ!」
「今、さらっと怖いこと言わなかったモーヴ?」
「さて次はセーソ。お前はムノーに無様にレイ◯されて悔しいよな?」
「それは…うん」
「じゃあ強くなってボコボコにした後、2度とオスとしての行為ができないように男のアレをぶった切れるくらいまで強くなろうか。じゃ、俺が馬車を引いてる横で今日からランニングな!」
「……えっと、今日は20km移動するって…」
「ランニングな!」
「あーヤバいとこ、来ちゃったかも…」
ノースの町の北門を通った後、モーヴこと鎌瀬犬彦がド変態マゾ筋トレ野郎だったと2人の少女は心底身にしみることになる…。
「ぎゃああああああ!あうあうあうあうあう…痛い、気持ち悪い、2分も持たない…一時間とかイカれれてる……」
全身が青ざめてチアノーゼ気味で過呼吸気味のアゲポヨが半泣きで馬車の中でもがいている。
全身が小さい針でずかずか突き刺されているような痛みと、二日酔いの様な気持ち悪さが入り混じったような最低の状態に冷や汗が止まらない。
これが鎌瀬流魔導鍛錬【禅】。
そして―――
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、休ま―――休まれぇ〜」
「おいおい、俺は馬車を引いてるのになんとも無いぜ?まだ5kmくらいだからあと1キロ、がんばれ♡がんばれ♡」
「まぁあああああ!!??(4km時点で同じこと言ってたじゃん!?)」
「はっはっは!知らない土地を走るのは気分がいいな!だがモヴヤック。山道や獣道は女の子には歩くだけでもキツイぞ?そろそろ休憩をはさんだ方がよいだろう?」
道無き山道を馬車をついに担いで、ヘラヘラ走るモーヴを見て楽しそうに隣で走るパパメルト。
「キツイ、苦しい、筋肉の悲鳴が聞こえる…そこから鍛え込み!血肉の痙攣を越えた先に何事にも代え難い達成感が待ってるんだぜ!もうちょっと頑張ろうや、あと2kmくらいと5分インターバル10回な!」
「おっほー!いくねぇ〜」
「「――――――(身の毛がよだつ)」」
モーヴが…というよりモーヴに宿ったワキヤックが強いのは特別な存在だからだと、何か不思議な選ばれし力なのだと夢見る少女二人は思っていた。
そんな訳がない!
変態的トレーニングを誰に言われたでもなく淡々とこなすから強い。
特別な事など何も無い。
二人はいつまで続くかもわからない拷問を時間の経過もわからなくなるほど続けた。
―――2時間後―――
「おええええええ!づいだ〜…」
「足が…足が…」
「おう!いい汗かいたな(馬車持ちスクワット中)?この町の宿で休む時に【回復魔法】で全快させてやるから…明日も頑張ろぜ!」
「「―――ぶんぶんぶん(無言で首を横に振る)」」
「おー、ここは既に獣王国内の『アルマジーロ』って辺境領地だぞ!昔戦争でここでヘレネスってクソほど強い獣人とやり合ったことあるからよく知ってるぜ!」
「おー!確かに外壁がノースより高くて強固な町って言うより要塞だな!早速入ってみようぜ〜」
「「(なんであの人馬車を引いたり担いでここまで来てあんなに元気なの?)」」
『アルマジーロ』の南門の検問所に差し掛かる。
「おや、珍しい。人族の冒険者かい?」
リザードマンのおばさん憲兵が柔和に話しかけてきた。
「ほい、冒険証な!」
「はえ〜、人族は馬も使わないで馬車を運ぶのかい?たまげたねぇ〜…『竜の物語』?聞かないねぇ…新規のパーティかい?悪いんだけどねぇ、C級冒険者パーティ以下は関税がかかっちまうのよ、銀貨4枚だけど大丈夫かい?」
「ほら、こいつでよろしく」
「ありゃ〜、人族の銀貨だね?駄目だよここは獣王国だよ〜。でも獣人を見ても嫌な顔しない気持ちのいい人族だからおばちゃん、サービスで特別にこの銀貨で通して上げる。でも後でここのギルドで両替しなさいな?国の中枢に行けば行くほど取り扱ってくれないからね!」
「おう!わざわざ親切にありがとなおばちゃん!」
「いいのいいの!最近じゃ前国王様もかませー領?とか言うところに行くぐらい親交があるぐらいだからね。戦争やるよりよっぽどええわ。じゃあね。良い旅を〜」
皆で親切なリザードおばちゃんに一礼して領内に入る。
そこはとても石造り!石造り!といった建物がひしめき合うモダンな雰囲気の通りがあった。
香辛料の匂いと賑わいと怒号がひしめき合う人族の国とは趣きが違うと言った様子にモーヴは目を煌めかせる。
兎、犬、猫、鳥、鹿などの獣人。
リザードマン、ドワーフ、妖精族などの亜人がわさわさとひしめき合う。
「そう、この感じ。海外に来たって感じの冒険感!観光だ!観光するぞー!」
田舎者感丸出しで、馬車を背負ったまま大広間に突貫して、奇異への視線を集めるモヴヤック。
フラフラと頭を抱えながら歩くアゲポヨと、生まれたての子鹿並みに足を震わせるセーソはあの元気のよさに恐怖する。
「やばいよアゲちゃん。あのモーヴ、変態だよ…」
「とんでもないね…私達どうなっちゃうんだろ?」
「いいじゃねぇのよ。まぁおっさんが護衛してやるからゆっくりと歩いて観光といこうぜ」
食べ歩きをしつつ、ゆるりとアルマジーロギルドへ歩をすすめる三人。
――――――――――――
一足早くアルマジーロギルドに着いたモヴヤックは店内のクエスト発注書とにらめっこしていた。
「せっかく冒険者になったし、ご当地クエストとかやってきたいよね」
「オイオイオイ、貧弱な人族の臭いがするぞ?オイ聞いてんのか―――グエッ!?」
「人族が俺様の周りをうろつくっダバッ―――!?」
「スカしてんじゃ―――ホゲぇッ!??」
モーヴに絡んでくる獣人の首横にある大動脈を目に見ねぬスピードで撃ち抜く事によって、周りに連中には勝手に倒れたように見えただろう。
「うん、竜王!?気になるフレーズだな、俺のパーティ名にピッタリの討伐クエストじゃねぇか!」
S級クエスト『竜王バハムート』討伐依頼。
脳筋マゾ空手 拳で大体解決する俺はこの世界がゲームの世界と知るのはストーリーがぶっ壊れた後 ハイドロネギ @sussee
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