6話 花鳥 月

「冬鷺さーんいるわよねー?」

「店に入ってきてから聞くんじゃない。いらっしゃい。」

「こんにちは。」

「あら、朔月じゃない。またお嬢の我が儘?」

「そうね。主の命令は絶対だから。」

「お前も大変だなぁ。」

3人でわいわい話している隙間をすり抜けてリエラは冬鷺の元へ。

「あの…」

「彼女の名は朔月さくつき。とある令嬢の部下でこの店のお得意様だよ。ちゃんと対価を払ってくれる。」

「まるで他の人は払わないかのような…」

「靈空と來命は殆どツケだ。総額いくらになるのか。」

手帳を開き、ぱらぱらと捲り始める冬鷺。

それを見て「いつか払うぜ。」と靈空。

「そうだ、冬鷺さん。リエラに協力して天界に行くから2人の装備を調えたいんだけど。」

「代金は。」

「勿論?」

「ツケか。」

「よく分かってるじゃない♪」

呆れた表情で手帳に【靈空・來命 装備新調】と書き足した。

「2人とも貧乏どころか裕福なはずなんだがな。」

「天界?悟りでも開いたの?」

「それはこのリエラが関わってるんだ。私が説明するぜ。」

「靈空、來命、体型等に変化はあるか?」

「多分変わってない…と思うわ。」

「私も変化無し…な気がする。」

「変わってたら装備作りにくいから採寸したいんだが。」

「私が代わりに採寸しておきますわ。布や糸を取りに行くのに時間が掛かるでしょう?」

朔月が採寸紐を持って言う。

「なら頼む。さっきの商品はそれと交換にしておくよ。」

冬鷺は闇の広がる店の奥へ消えた。


「靈空から大体は聞いたけど…天界に何しに行くの?」

「勿論元凶を説得しに行くのよ。私の家が潰されるなんて許しておけないわ。」

「妖怪しか信仰してない神社なんてろくなもんじゃないぜ。」

「その通りね。手、上げて。」

「ん。あんた達も人間じゃないくせに。」


「この店にいる者は全員人間じゃないだろ?半妖半霊と魔法使いと巫女神と天使と…」

「そういやお前なんなんだ?」

「ふふ、人か獣か妖怪、神か…なんでしょうね?」

「質問に質問で返すなよ…」


「そんなことより2人とも、剣と鏡は持ってきたかい?」

「勿論!」

「もうこれは体の一部ね。」

靈空の背中の剣と來命の鏡が遇われた懐中時計がキラリと光る。

「なら良い。まあ君等以外には使えないだろうが…」

「私もこれを持ち歩いてはいます。」

朔月は勾玉を取り出し首から提げた。

「おおそれは嬉しい。お嬢様には何か?」

「特に何も。1度錬金術の媒体にされかけたくらいでしょうか。」

「媒体化しても何も出来ないよ。力の抽出も不可能だ。」

「あの、それらは一体…尋常じゃない力を感じます。」

「私のは星魔剣ほしのまけん。数年前に冬鷺がくれたんだ。」

「同じく。これは霊夢鏡れいのゆめかがみ。」

「私もです。時月玉ときのつきたまと言うらしいですが。」

「ただのお守りだ。僕がちょっと弄ったがね。」

「絶対普通の物じゃないですよね…」

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彗楽園 天黒燕 @whiteswallow

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