幸運と孤独

 人間万事塞翁が馬。禍福は糾える縄の如し。人生における運の要素に個人差などない。……などと唱える奴は少なくない。

 だがそんなモノ、僕に言わせれば不幸な人間の負け惜しみに他ならない。何故なら僕は、生まれてこの方幸運にしか恵まれてこなかったからだ。

 幼少期は裕福な家庭に生まれ、何不自由なく暮らす。ゲームに漫画にカード。ちらつかせれば友達に不自由することはなかった。

 受験も就職も、親のコネがあれば楽勝だった。適当に出社さえすれば、平社員の何倍もの給与が貰えた。

 極めつけは、気紛れに買った宝くじ。1等……とはいかなかったが、それなりの額が当たった。親の財産と合わせれば、一生遊んで暮らせる額だ。これを幸運と言わず、何と言う?

 確かに贅沢三昧が祟って大病を患ったが、世界的な名医を雇って一命をとりとめることができたことだって幸運だ。

 まあ、昔の友達は誰一人お見舞いには来ないが問題無い。今は友達をレンタルする時代らしい。僕の病室には毎日違う友達がお見舞いに来るんだ。

 万が一病気が悪化して、死ぬことがあったって大丈夫。幸運な僕の葬式には、大勢のが参列するに決まってる。

 だって僕にはお金があるんだから。

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