自転車 🚲

上月くるを

自転車 🚲



秋暁の田んぼ道にはたれもゐず

朝寒のビニールハウス稼働せる


長月のヒマラヤ杉のうつさうと

土に置くサッカーボール律の風


自転車を停めて見てゐる秋の川

展望台の真下にたゆたふ秋の水


サフランや看板古び現金屋

秋風や倉庫壊して店じまひ


秋晴や日溜にある法務局

秋高し命終のとき無一物


女性社員に武張る巨漢や藪じらみ

強者にはへいこら小者やぶ枯らし


十月の太陽に肺ひろげたり

鳥の目に秋青空の溢れけり


ベスト着て五臓六腑も秋温し

便箋のやさしき文字や冬近し


秋草の線画を散らせる本カバー

毛糸編むすなはち星座編むごとし


脱いだもの引つかけてある屏風かな

眠るまで友を想へり星飛べり




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