第24話 稲守任三郎とダンジョン3回目②

(ボクの所・・・つまりダンジョンの最下層って事か?)


考えても仕方がないので、ポーションを鞄にしまい、当初の目的を達成する事にした。


岩山エリアで鉱石や土、サハギンエリアでサハギンの素材と水、そしてイワシ数匹、ゴブリンエリアでゴブリンの耳を取り、急いで通路へと戻って魔法の検証を始める。


「さてと・・・」


ゴブリンの再出現に合わせ、手のひらをゴブリンエリアに向けて詠唱文を読み上げる。


しゅうかいせんくう、貫け土の槍!」


稲守の腕に沿うように周囲の土や砂が集まり、槍を象り、再出現したゴブリンへと襲い掛かる。


しかし、空を翔る土の槍はゴブリンの右上当たりを素通りする。


(あぁ、そうか、照準に関する詠唱文が無いのか。なら)


しゅうかいせんくう、翔り貫け土の槍!」


狙撃の狙を加え、かつ手を銃に見立てゴブリンの頭部を狙うようにする。


風切り音と共に土の槍がゴブリンの頭部に飛んでいくが、何かに阻まれる。


『ダメダメ、エリアの外からはさすがに卑怯だよ。前回は許したけど今後は許さないからね!』


例の自称神からのダメだしだ。


(まぁ、これが出来たらさすがにか)


ゴブリンは突然目の前で土の塊が爆散したせいか、細かい土が目に入り両手で目をこすっている。


『ギャギャ!ンギャー!』


(視界がつぶれてる今だ!)


エリア内に入り、ゴブリンに指を指しつつ詠唱する。


しゅうかいせんくう、翔り貫け土の槍!」


腕に沿うように周囲の土や砂が集まり、槍を象り、再出現したゴブリンへと襲い掛かる。


風切り音と共に土の槍が打ち出され、ゴブリンの頭部へと吸い込まれる。


『ギャッ!』


頭部を貫通し、ゴブリンは倒れる。


(ふう・・・)


身体の感じから、後3回程は使えるようで、少し休みつつ次は火の魔法を試すことにした。


通路に戻った稲守は、バッグを下ろし、キャンプで使用するような焚火台を広げ、中に炭を入れ、詠唱を始める。

イメージはターボライターのような安定かつ高温の火。


ていせん、指先に灯せ」


土の槍と同様に指先を木炭に向けると、イメージした物とは違い、レーザーの様な赤い光線が木炭へと向かう。


熱せられた木炭は赤身を帯びつつ燃焼を始める。


「うーむ・・・」


恐らく、租と閃が光線のようになったのだろうと推測した稲守は、速度を上げる速、射出するイメージの射を加え、ゴブリンエリアに向かって詠唱をしてみる。


そくてんしゃせん、撃ち穿て閃光」


指先から出た光の点が飛び出し、ゴブリンエリアの向こう側へと飛んでいく。


「おお・・・なるほど大体わかってきたぞ」


そう言えば最後の文だけで魔法を使えないか試すが、自称神のいう通り、何も起きはしなかった。その後は火を入れた炭を使って、耐熱カップで水を沸かす。

水はサハギンエリアの滝からろ過装置を使って採取した水だ。

インスタントコーヒーを入れ、一口。


(・・・ふぅ)


これで景色が良ければと思いつつ一息つく。


(とりあえず土と火は良い感じだな)


少し考えるが、検証するにしても詠唱をすぐに思いつくわけもない為、とりあえずは今は水、土、火のバリエーションを増やす事にした。


その後はコーヒーを飲み干し、サハギンやゴブリンに魔法の試し打ちをしていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

3日ごと 20:00 予定は変更される可能性があります

稲守任三郎と近代日本にダンジョンが出る的な話 正方 箱之介 @boxSquare

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ