物語 2
次に死にたくなってしまったのは16歳の時。
ふと死にに行こうと思って、少ないお金を持って、朝から12時間歩き続けたけど、死ぬのが怖くて死ねなかったの。
駅のホームから、線路の石を取りに行けばいいだけだったのに出来なくて、そのまま電車に乗っちゃった。
彼女は涙を流すこともなくたんたんと話していた。
次に死にたくなってしまったのは19歳の時。
周りが人生楽しそうにしているのに、私は何ひとつと楽しめなくて、憧れていた19歳達と、私自身でのギャップで死にたくなってしまって、まだ未成年のくせに酒にもタバコにも手を出して、早く死ねるように努力を始めたの。
それでもやっぱりまだ死ねなかった。
次に死にたくなってしまったのは22歳。
ここでやっと気がついたの。私3年単位でこの世界にさよならを言おうと決意してなにか行動するって。この年には酒によく溺れ気がつけば知らない男と寝ていたり、夜まで呑んでいたはずなのに、気がつけば道路で朝を迎えたり、大学生らしい大学生をしていたような気がするの。
名前も知らない男と一夜を共にすることでその気持ちを隠していたつもりだったみたい。
でもそうやってまた心の傷を広げていた事にも気づいていたの。今思えば良くないことをしたわ。
彼女はミルクティー色の髪の毛を指に巻きながら苦笑いをしていた。そんな彼女は電子タバコを手に取り煙を吐いた。それにつられたように、俺もポケットに入っていた紙タバコに火をつけて彼女と一緒に煙を吐いた。
互いの煙が混ざり合う音しか聞こえず、彼女が新しいタバコを差し替えた時にまた彼女は口を開いた。
話していたらすっきりした。聞いてくれてありがとね。
彼女は煙と一緒に言葉を吐いた。ほんの数分前には濡らしていた頬も今は乾いていたが、目や鼻は赤く腫れていた。
彼女と俺は今は24歳になる。
今はつきあって1年目だが、彼女にとったらあと1年でまた死にたくなってしまうのかもしれない。分かりたくても分かれない。
そんな俺に出来ることはあるのだろうか、俺は少し考え煙を吐いた。
いつか泣き出してしまいそうな彼女を俺は力強く抱きしめた。
想 ニーマ @Ni__ma_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。想の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます