物語 1

 こんな世界に生きている意味なんてないんだと思う。働けば働くほどお金を取られて、その癖して働かなければ社会から非難される。

もうそんな人生に疲れてしまったの。


 彼女は泣きながら俺に抱きついて叫んだ。

沢山沢山言いたいことを抱えて生きてきて、やっと言えた時には限界をとっくに越してしまっていたのだろう。声にならない声で何かを叫んでいた。


その何かを俺は理解することが出来なかった。


 彼女はずっと涙を流して俺から離れなかった。俺はどうしたらいいか分からず、頭を撫でながら彼女が落ち着くのを待った。俺は二十四年も生きてきたが考えたこともないことを言われてしまい、彼女へ発言できる言葉を脳内の辞書で探していた。


辞書の言葉が見つかる前に彼女の涙が枯れてしまい、鼻をすすりながら彼女はありがとうとガラガラの声で言った。

「大丈夫?」

やっと見つかった言葉はどこぞの他人でもかけれるようなしょうもない言葉だった。


彼女は寂しそうな顔をしながら

「ありがとう。大丈夫だよ。」

とずっと俺に撫でられて少しボサついてしまった髪の毛を整えていた。その間もずっと彼女は寂しそうな顔をしていた。

俺はやっぱりどうしたらいいのか分からず彼女の毛ずくろいを手伝った。


「過去の話をしてもいい?」


彼女は寂しそうだが、少し懐かしいような顔で俺に聞いた。俺の反応を見ようともせずに彼女は1人でに喋りだした。


 ねぇ、死にたくなってしまった事ってない?

何回聞いても君は無いって言ってたね。私が最初に死にたいって思ってしまったのは14歳の時、お母さんに

「お前なんか産まなきゃよかった。死ねよ」

と言われてしまった時が最初かな。


 俺は何も言うことが出来なかった。彼女の家庭はあまりいいとはいえないとは聞いていたがここまでとは思っていなかった。

俺は今にもまた泣いてしまいそうな彼女を抱きしめる力を少し強め話の続きを聞いた。

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