綾乃と亮介 ／ three, four or five

第14話 her for four

　店からほど近いラブホテル。ベッドは小さくないのだが５人ではさすがに狭く見える。綾乃が中央に腰掛けるとその四方を男性達が囲むように座る。

「恥ずかしい〜」

　両手で顔を覆いながらも、指の隙間から見える目からは逆ハーレムへの喜びが溢れている。亮介はそんな綾乃の一挙手一投足を、声を、そして表情を全て堪能するためにあえてプレイには参加せず、鑑賞のみに徹することにした。

　童顔のZ君がバックハグしながら早速キスを始める。綾乃好みの甘い顔だが女慣れしてそうな経験を感じさせる。

「ん……」

　綾乃もすっかり落（・）と（・）さ（・）れ（・）て（・）い（・）る（・）ようで、目を閉じながら右手で彼の頭を撫でる。

「ぁ……、上手……」

　綾乃の左にいるのは安⚫︎顕に似たJさん。恐らく最年長となる40代のダンディ。ブラウスのボタンを手早く外し、右側を担当するE君とおっぱいを愛（め）でてくれている。

「はーい綾乃ちゃん、ちょっと腰浮かそうね」

　S君はあっと言う間にスカートとショーツを同時に脱がせてしまう。綾乃は薄紫のブラとはだけた白ブラウス以外は裸になってしまった。

「いや……ん……ぁあ！」

S君の頭が綾乃の両脚に挟まれる。卑猥な音を立てて舌技を駆使してくれているようだ。

（なんて綺麗なんだろう……）

　眼前で繰り広げられる異様とも言える男女５人の戯れ。

　妻である綾乃の意識に果たして自分はいるのだろうか。

　この快楽の海深く沈んでいく中ですっかり忘れ去られているのではないだろうか。

　目眩（めくるめ）く四人の男性の奉仕。

　４つの口と８本の腕４０の指。

　息つく暇もなく襲いかかる愉楽と刺激。

（あたし……どうなっちゃうんだろう……）

　綾乃は仰向けにさせられながらぼんやりと考えていた。

　例えるなら小関⚫︎太。かわいい顔に似合わずカリ高で無骨なZ君のペニスが綾乃の口に押し込まれる。

（……んん！……）

　その瞬間、綾乃の目が一瞬大きく開いたが、うっとりとした半開きの目つきでフェラチオを続けた。

　S君が亮介の横に来た。

「綾乃さんって、やっぱりドMですか？」

「やっぱりわかります？」

　苦笑いして答える亮介。

　芝⚫︎輔のようなE君は眼鏡を外してクンニに集中している。ルームに入る前にも綾乃との会話でやる気を感じさせてくれていたから、見ている亮介も報われた気持ちになり嬉しい。

「痛いのとか？」

「スパンキングまでなら大丈夫な程度です。それより拘束系とか言葉責めに弱いです」

　S君はニッと笑って戦列復帰していった。なんと頼もしいのだろうか。

　◆

「綾乃さん、俺もう我慢できないよ……」

「え、あ、入れたいの？　ちょっと待っ……」

　E君は、Jさんに仁王立ちフェラしていた綾乃の腰を掴んで持ち上げるとゴムを付けてピカピカに光る肉棒を後ろから突き刺した。

「ぁああああああああああああッ！！」

　恐らく部屋の外まで聞こえたであろう絶叫。もしここがハプニングバーだったら、プレイ後にルームから出てくる綾乃を他の人たちはいったいどんな顔で見てくれるのだろう。新たな楽しみが見つかって胸を躍らせる亮介だった。

　Jさんはイラマチオで綾乃を串刺し状態に持っていく。

（うぅ……うぅ……うぅ……うぅ……）

　涙目でぐしゃぐしゃな顔の綾乃。横目でこちらを一瞬見た気がするのは気のせいか。いずれにせよ無我夢中で挟まれている綾乃の姿は美しく、亮介はただただ見惚れていた。

「ぁあ、綾乃さん、綾乃さんの、おまんこすごくいいっ……」

（ん――んーんっ、んん！　んん！）

　ほとんど声にならない声。だが綾乃がなんと言っているのか亮介にはよくわかる。

「イクよ、いく、いく……あぁ、ああっああっああっああ！」

　だんだんとゆっくりになっていくE君の腰。抜いた瞬間に引き継いだのはZ君のカリ高だった。

「――！！！」

　ゆっくりで激しさは無い。だが、その形と太さが綾乃の襞（ひだ）の凹凸（おうとつ）に沿って受容体一つ一つにあやしい刺激を与えていたのだった。

　亮介の目に驚きの光景が飛び込んでくる。

　ソファーに座るE君をお掃除フェラしているS君の姿が見えたからだ。確かに志⚫︎淳のような中性的な雰囲気だし、肩まである長い髪も相まって女性に見えるぐらい綺麗な顔の造りをしている。むしろバイセクシャルでない方が勿体（もったい）ないのかも、と亮介には思えた。

（なんかすごいことになってきたな）

　Z君は長時間プレイできるタイプのようで、一旦竿を抜くと綾乃をJさんに譲り、綾乃の両手首をしっかりと掴む。

「あ、ああ、これダメ、これ……ダメダメ！　あぁ……」

　正常位でJさんが入（・）っ（・）て（・）く（・）る（・）。

「ぁあ、すごい！　すごいすごいすごいすごい、イイっ！」

　狂喜する綾乃。四肢をホールドされて乱舞は不可能だ。

「あぁ〜ん、こんなのダメ……ダメだよう……ううぅ……うう……ああぁ、ああ……すごく、すごく気持ち……いい」

　絶妙のチームプレーでポジションチェンジするJさんとZ君。２本のチンポにかわるがわる愉しまれている綾乃の蜜壺。

「綾乃さん、今度はもう俺……いく、よ？　いっちゃっていい？」

「……ハァ、ハァハァ……いいわよ、たくさん激しく突いて、いっぱい……気持ちよくなって……」

「ぁあ、うん、ありがとう……いく――イクイクイク……あぁ」

　Jさんが入れ替わりで綾乃の上に覆い被さって抱きつく。

「店に入ってきた時から決めてたよ、絶対この子を抱くって」

　年の功というべきか、余裕を感じるJさんだったが綾乃に対してこんな想いを抱（いだ）いていたとは。

「嬉しい……」

見つめ合いながらキスを楽しむ二人。衆人環視でラブラブモードに持っていけるその胆力（たんりょく）――。圧倒される亮介だった。

　ゆっくりと前後に動く腰。

「あぁ……素敵……」

「君の方がもっと素敵さ」

「あん……Jさん……」

「もっともっと綾乃ちゃんを知りたいよ」

「……うん……Jさん、来て……」

　だんだんとストロークが速くなっていく。

「綾乃ちゃん……」

「Jさん……ぁあ、気持ちいい……いいわ……」

「綾乃ちゃん……綾乃ちゃん……」

　亮介は、歳上の男性に抱かれる綾乃を見るのは初めてだということに今やっと気づく。想像もしてこなかったし、そういうこともないだろうと漠然と考えていた。しかし、今目の前にあるのはある種の恐怖だった。

　仕事でもそうだが、キャリアを積んでいくことでしか達することのできない境地がある。座学や訓練といった「教育の限界」を超えたそれは往々にして年月の経過を伴う。長い期間を経てしか得られないものだとしたら、そこに追いつくこともできないし、急いて獲得できるものでもない。亮介が対峙（たいじ）している畏（おそ）れはそうしたもののようだった。

　今日３人目の男性が綾乃の上で果てた。

　綾乃の目は天井を見ている。その瞼は開いているが、いったいどこに焦点を置いているのかは亮介にはわからない。