第4話

春の風が頬を翳めたあの日。

私と、瑛(てる)君は出会う。

校舎裏の何かしらの木がつくる影。地面は芝生みたいになっていて、革靴を履いたままでも座り込んで脚を伸ばせば心地がいい。私は木の幹に寄り掛かって、そうして座って、ぼうっとしていた。

何かを、後悔しているのだ。


「みつけた」


声がした。

どこから――と思って顔を真っ直ぐ上げると、目の前に人影があって驚く。


木の幹に軽く打ち付けた後頭部をくすくすと軽快に笑って、綺麗な顔を覗かせているその人。

私は、彼を知らない。

彼は、私を知っているのだろうか。

万が一知っているのだとしたら、全く知らないことを知られてしまっては失礼かと思い、へら、と崩した笑顔で迎える。


「いい天気だね」


耳馴染みの良い透き通る声は、どこかで春というより夏を感じさせる。不思議なほど違和感なく隣へ腰を下ろす彼は真っ白なワイシャツを腕まくりしているが、首元に制服の黒っぽいタイがなくスラックスも指定の物ではなかった。

ここで生徒ではない可能性も出てくる。


「瑛」


瑛君は、そこらへんの男子より大人びた表情を見せる。

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カントリー・カントリー 鳴神ハルコ @nalgamihalco

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