第3話

いつも思う。

他の人からしてみれば、何の変哲もないことだって。

だから、そこまで落ち込むことないんだって。

それでも、頭では解っていても割り切ってくれないのが自分の心ですよね。哀しいことだけじゃない、楽しいことだってそうなのだから。

切欠は、本当にちいさなこと。

他の人からしてみれば。

私。絵茉からしてみれば、ちいさいとか、おおきいとか。そう割り切ることもできない辛いこと。

歳は十六。高校二年生。

行けば楽しいと思うアルバイトも、行く前の辛さから逃げて、辞めてしまった。

きっと、言うんだろうな。

『若い子はしょうがない』って。

そう考え始めてしまったら、きりがない。早く忘れたい。けれどこの傷は大きい。私の未来にとって。


切りすぎた前髪が風に揺れて、気にする深爪が石鹸に沁みて、パリパリになっちゃう唇はどうしようもなくて、涙が零れそうな眸は他人を知らない。


「みつけた」


そう、この日まで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る