第84話

「怖くないよ。」




彼は優しく微笑んだ。



それが、本当かどうかなんてどうでもよくなるくらい。




彼のこの言葉は、誰に向けてのものだっただろう。



彼のくちづけに、どんな意味が込められていただろう。





「……っ。」




あたしは。


どうしてか突然、泪が込み上げてきて。



俯いて、らいおんさんの柔らかい髪に手を伸ばした。





らいおんさんはそれについて何も言わなかった。





ただ、そのまま抱きしめてくれた。






あたしの口の中に、自分の“血”の味が広がった。

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蒼屋根の下のらいおん。 鳴神ハルコ @nalgamihalco

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