第83話

『こわい』



今そう云う睛をしている。




――あたしじゃない。




らいおんさんが。





傷付けると言ったのに、傷付けられる人間より怖がった睛をしている。


どうして?



「らいおんさんは、何が怖いの?」




なぞられた唇に籠った熱は、ただ答えを探して。




睫毛の先の、震える彼を見つめた。









「……。自分が、怖いの?」

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