探索者学園から目指すダンジョン一攫千金 ~金のない俺が、ダンジョンで無双配信して大金持ちになるまで~

蛇乃木乱麻

第1話 ダンジョン

俺とほか数名を乗せた黒いバンが止まる。

「着いたぞ。ここが最終試験の会場だ」

大柄な教官の声に従い、バンから降りる。


降りたのは教官と最終試験まで上り詰めた俺含め4人。


「聞いているとは思うが、再度説明するぞ。最終試験は4人一組でダンジョンに入り、無事に出てこられれば合格となる。装備はすべて渡してある。健闘を祈る」

教官から最後のねぎらいを受けた俺たちは、そこの見えないダンジョンの入り口に飛び込んだ。


 ◇


 50年ぐらい前、突然世界各地に底の見えない穴が無数に開いた。どのくらい無数かと言えば、県に10個以上あるくらい。

 その下はダンジョン、とのちに名付けられることになる巨大空間につながっていた。

 ダンジョンの内部は不思議なことに、トロピカルな島や無限に続くとも思える迷宮など明らかに物理法則を無視した空間が存在していることが分かった。


 ダンジョンが出現した国々が、総力を挙げて内部の調査に乗り出した。


 しかし調査は想定外に難航した。

 ダンジョン内部にはモンスターと呼ばれるファンタジーな怪物が無数に居り、それを束ねるボスモンスターを倒さなければ、調査どころか外にも出られないという罠まで備わっていた。

 さらにモンスターには銃をはじめとする現代兵器がほとんど効かず、戦車を破壊できるロケットランチャーを用いても蚊に刺された程度のダメージしか加えられない。

 多くの人間がどんどんダンジョンに吸い込まれては消えた。しかも、中に人間がいなくなるまでダンジョンはその口を固く閉ざし、時間まで奪っていった。


 しかし25年前、転機が起きる。

 ダンジョンからボロボロの剣一本と多くの収穫を持って、血まみれの体で帰ってきた男がいた。

 名を鳳凰ほうおう ムサシ。日本人だった。


 日本らしい、というべきかすぐに解析が進み様々なことが分かった。

 魔法を書き記した本や魔法のエネルギー源である魔石、特殊な性質を持ったモンスターの肉体。なにより『ダンジョン内部の物であればモンスターに大きなダメージを与えられる』という事実も持ち帰られた。


 莫大な可能性を秘めた迷宮を、各国は危険視し、また求めた。

 ダンジョンは物理的にも法律的にも封鎖され、(国から)選ばれし者たちのみが入れる場所となった。そして選ばれし者は探索者、と呼称されるようになり、その者たちは例外なくその国でトップの資産を持つスーパースターになった。


 ◇


 そして2年前、探索者の高齢化を危惧した政府は新たに「探索者学園」を設立した。学園の生徒は高校生をしている年齢の人間の中から募集された。政府いわく若いゆえの伸びしろと時間を期待してのことらしい。


 人間のすべてを使わなければならないとてつもなく厳しい試験を潜り抜け、学園でダンジョン攻略のイロハを学んで卒業した者には探索者の資格、つまり億万長者+スターになる権利が与えられる。当然ダンジョン内でお星さまになってしまう者もいるが、命を懸けてでも手に入れるべき対価がそこにはあった。


 俺もそうだ。探索者に支払われる報酬に魅入られて、学園の最終試験まで残った。


 魔法だなんだと講釈を垂れたが、結局世の中は金だ。生まれたときから探索者くらい金のあるやつは、探索者が命を懸けている間、酒池肉林パーティーでもしているのだろう。

 ダンジョンが仮にこの世界になくても、金がなくては生きてはいけない。かつての俺、白金しろがね カナトがそうであったように。


 落下の感覚が終わり、あたりが見えるようになる。さあ、億万長者になるためのチケットをもらおうか。

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