他の生徒に不満を持たれてしまいました
―――
「おはよっ、涼くん」
「おはよう、楓ちゃん」
楓ちゃん家の朝、俺と楓ちゃんは今日も挨拶を交わした。
挨拶した直後、楓ちゃんは俺の前でクルッと1回転する。
制服のミニスカートの裾がひらりと揺れて、俺の視線を刺激した。
「ふふっ」
そして楓ちゃんは妖艶に微笑む。俺の大好きな表情だ。
わざとスカートを揺らして俺を誘っている。誘惑している。俺はまんまと悩殺されて思考回路が壊れた。
昨日、いつかごく自然にパンチラするシチュを作ると言っていた。
今もまだ見せてくれない。いつどこで見せてくれるかわからない。たぶん、当分の間は楓ちゃんのパンツを見ることはできないと思う。簡単に見れたらおもしろくないのではと言っていたからだ。
焦らして焦らしまくって、溜めに溜めて、それからパンツが見えてしまうハプニングが起こるんじゃないかと思っている。
パンツが見れることを示唆しておいて、でも見れない。見れそうで見れないというのは効果は抜群で、俺は楓ちゃんのスカートの中身を妄想して朝っぱらから欲情してしまった。
―――
とはいえ、女子高生のスカートの中を考えてるような男が女子校に行くのは非常にまずいと思うんだよな。気持ちをリセットしてちゃんと働け。
何かがあって楓ちゃんに迷惑をかけるわけにはいかないからな。いつも楓ちゃんにデレデレしている俺だが、仕事は仕事だ。切り替え大事。
仕事の休憩に例のトイレを使って出る。
トイレから出た瞬間に感じた、冷たい雰囲気。俺はこの雰囲気経験がある。前の会社に勤めていた頃、俺が無能なもんで同僚から無視されたりした、あの時の感覚に似ている。
女子生徒が何人かいた。生徒たちも今は休憩時間か。
俺と目が合うと、冷たい視線で見られる。俺とある程度距離を保ち、ヒソヒソと話している。
「あのトイレ、あの男以外が使うと風で吹っ飛ばされるらしいですわよ」
「でも設備は私たちが使っているトイレより優れているらしいわ」
「私たちが使っているトイレよりいいトイレをあの男だけが使ってるなんて、納得できませんわ」
「そもそもこの学校は男子禁制なのにあの男性が優遇されているとはどういうことですの? いくら中条会長がやったこととはいえ許せませんわ」
……ああー……やっぱり他の生徒に不満を持たれてしまったか……
俺が危惧していたことが起きた。俺専用のトイレを学校の目立つところに設置なんて他の生徒は納得できるのかよとは思っていた。
俺が他の生徒よりいいトイレを使っている上に、無駄にデカいトイレだ。邪魔だと思っている生徒がいてもおかしくはない。
その後も女子生徒と目が合う度に冷たい視線を浴びた。このままでは俺の豆腐メンタルに大きな影響を及ぼす。もうすでに泣きそうだ。
―――
このままでは生徒のほとんどを敵に回しかねない。俺1人ではどうすることもできず、楓ちゃんに相談するしかない。
放課後の車の中、トイレの件で他の生徒から良く思われてないことについて楓ちゃんに話した。
「……そっか……生徒から不満が出るのは予想できてたけど、思ったより早かったな……」
話を聞いた楓ちゃんはそう言って真剣な表情で考え込む。真剣な表情をした楓ちゃんもありえないくらい美少女で俺はドキッとする。
「大丈夫だよ涼くん、私に考えがある。涼くんが肩身の狭い職場なんてこの私が絶対に許さない。私が絶対なんとかするから」
「ほ、ホントか!?」
「ペットを守るのは飼い主の責務だからね。私に任せといて」
「ありがとう楓ちゃん」
楓ちゃんは生徒会長で、生徒たちは楓ちゃんに頭が上がらないのを見た。社会でも学校でも圧倒的な権力を持っている彼女。
そんな楓ちゃんが味方をしてくれるなら百人力。楓ちゃんは可愛さとエロさと心強さを備えている。
「よし、じゃあ涼くん。来週に全校集会があるんだけど、それに涼くんも出て」
「えっ? 俺が、全校集会に?」
「うん」
「……その集会で、俺が生徒に不満を持たれてる問題を解決してくれるということか?」
「うん。元はと言えば私がトイレ作ったのが原因だし私が責任取るよ」
「……わかった」
生徒でも教師でもない俺が名門お嬢様学校の全校集会に出席することになった。
不安もあるけど、楓ちゃんならなんとかしてくれるんじゃないかっていう期待の方が大きい。
何をするんだろうな……全校集会だし生徒たちの前で話とかするのかな。
―――
そして全校集会の日がやってきた。
場所は前にちょっと覗いたことがある体育館。やはり広い。
この学校、生徒数は1000人を超えるらしいが、その1000人を余裕で入れられる広さ。
教員の方や職員の方も来ている。わかってたけど全員女性。緊張する。1000人以上全員が女性の空間に男1人で入るのはかなり勇気がいる。
楓ちゃんに集会出ろって言われたから逃げる選択肢はない。ペットだからね、飼い主の言うことは絶対なのだ。俺は勇気を出して体育館内に一歩の足を踏み入れた。
―――ズンッ!!
「いっ……!?」
体育館内に入った瞬間、俺は顔をしかめた。
その一歩の足を、思いっきり踏みつけられたからだ。
足を踏んだ奴の顔を見る。
うわっ、ヤンキーだ! 不良女だ!
緑色のボサボサな長い髪に、大きなマスクをした女子生徒。
それだけじゃ不良とは思わないけど、金属バットを持ってやがる。しかも明らかに何かを殴ったような痕跡があるバットだ。
そして目つきがヤバイ。めっちゃ鋭い釣り目で睨みつけてくる。ケンカ慣れしている目だ。これは不良だろ。この子のこと何も知らないけど絶対不良だろ。
ヤンキーって基本群れるみたいだからな、そいつの周りに仲間と思われる女子が複数いる。そいつらはニヤニヤしながら俺を見ている。
俺の足を踏んだヤンキー女がリーダーポジっぽいな。
「……足踏んだのはワザとってことでいいんだよな? 痛いんだけど」
「うるせぇよハゲ」
ハゲてねぇよ! 初対面の人間に言う言葉がそれかよ!!
おい、ここ名門お嬢様学校じゃないのか!? 足踏んでハゲ呼ばわりするヤンキーが混じってんだけど!! お嬢様要素どこだよ!!
「おいおっさん」
ヤンキー女におっさんって呼ばれた……地味にダメージでかい……俺まだ24なのに……おっさんではない……よな? いや女子高生から見ればおっさんなのか……?
「おっさんさぁ、ここがどこだかわかってんのか」
「……名門お嬢様学校、星光院学園」
「なんで女子校におっさんがいんだよ? 目障りなんだよ消えろ」
なんで足が踏まれたのかはわかっている。トイレの件もそうだし、この学校に男が存在すること自体悪だと思っている生徒が少なからずいる。このヤンキー女もその1人なんだろう。
「ああ、俺は楓ちゃんに連れられてここで働くことになったんだ」
「知らねぇよ。あたしが許可した覚えはねぇぞ」
まあねぇ……そりゃ他の生徒は知ったことじゃないだろうが……俺に言われても困るんだよな。俺は楓ちゃんのペットで楓ちゃんに従ってるだけなんだから。どうしても文句があるなら楓ちゃんに言ってほしいぞ。
「お前もしかして、ここにいれば女子高生の1人や2人とヤれるとでも思ってんのか? 気持ちわりぃんだよエロ野郎」
ヤれるなんて全く思ってない。ほとんどの生徒に嫌われてるのはわかってるし。
……でもエロ野郎って言われたら何も言い返せない。思いっきり楓ちゃんに下心があるからだ。
「この学校の支配者は中条楓じゃねぇ。
このあたし、
ナイフみたいな目でギロリと睨みつけられる。
確かに怖い目つきだが、不思議と俺はあまり恐怖を感じなかった。
「この学校に男なんかいらねぇ、くたばれ」
堀之内と名乗ったヤンキー女は金属バットを振りかぶった。
え!? そのバットで殴るの!? それは死ぬ! 死ぬって!!
さすがにこれは恐怖した。ダメだ死ぬ。
―――ガシッ!
「何してんの堀之内さん」
「てめぇ……! 中条楓……!!」
「楓ちゃん!」
堀之内さんにバットで殴られそうになった瞬間、間一髪のところで楓ちゃんが登場。
バットが握られた堀之内さんの手首をしっかり掴んでいた。
次の更新予定
彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました 湯島二雨 @yushimaniama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われましたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます