声に敏感すぎる辛さ

白鷺(楓賢)

本編

人の会話がどうしても気になってしまう。普通の会話であっても、それが自分に関係するものではないか、もしかしたら悪口を言われているのではないかと考えてしまう。日常的な雑音や会話の一言一言が、私の心を強く揺さぶる。これが「声に敏感すぎる辛さ」だ。


例えば、家で過ごしているとき。窓の外からご近所さん同士の楽しげな会話が聞こえてくる。それだけなら、普通のこと。でも私にとっては、何気ないその会話が、何か自分のことを話しているのではないかと思ってしまうことがある。「あの人、○○してたんじゃない?」とか「見た? あの家の人…」といった言葉が、私に向けられているように感じる。実際には何の根拠もない。でもその一言が頭の中でぐるぐると回り始めると、どんどん悪い方向に考えてしまう。


同じことが職場でも起こる。誰かが遠くでヒソヒソ話をしていると、その内容が自分に関係しているのではないかと感じる。彼らは私について何かを話しているんじゃないか、私のことを良く思っていないんじゃないか、という不安が心の中に広がる。周囲が気づいていなくても、私の心はそのヒソヒソ声を拾い続け、そのたびに焦りや不安が強まっていく。


カフェやお店でも同じ現象が起こる。静かに過ごしているつもりでも、周りの会話がどうしても耳に入ってくる。何か言われているわけではないとわかっていても、無意識のうちに「自分のことを話しているのでは?」と疑念を抱いてしまう。隣のテーブルの人たちの会話も、店員さんが話している内容も、全てが気になってしまい、その瞬間から私はその声に集中してしまう。そして、その内容を勝手に悪い方に解釈し、心の中でストーリーを作り上げてしまう。


特にひどいときは、幻聴まで聞こえてくる。現実には存在しない声が耳の中でささやき、その声と現実の声が区別できなくなる。どれが本当の声で、どれが自分の想像なのか、混乱してしまう。心の中では「そんなはずない」と思っていても、どうしてもその声が気になってしまう。そして、どんどん自分を追い込んでしまう。


このように、日常的に「声」が私を苦しめている。周囲の何気ない会話が、私にとっては大きなストレスとなり、不安を生み出す原因となっている。何度も「気にしないようにしよう」と思っても、敏感すぎる耳がその声を拾い続け、心の平穏を乱す。それが生きづらさの一因となっていることは間違いない。


この敏感すぎる耳と、常に悪い方へと向かってしまう心は、私にとって大きなハードルだ。外の世界に出るだけで、様々な声が私の心に入り込み、私を不安にさせる。その結果、声を気にするあまり、心の余裕を失い、日常生活が一層辛くなってしまう。自分の頭の中で勝手に膨らんでいく不安と、それに対処できない自分自身との葛藤が、私にとっての現実だ。

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