スチームタウン起眞、ラーメン屋万華鏡

最悪な贈り物

万華鏡

そこは煙の町だ。


2024年、冬。


そこは煙で覆われた町だった。


その日は、空が雲で覆われていて、一日中ずっと暗い日が続いた。


「よお、親父さん!」

俺は、長めのロングコートを着て、ラーメン屋、万華鏡へと足を運んでいた。


「おお!!!日高!!今日も食ってけ食ってけ!!!」

そう言いつつ、金を手渡しすると、いつものメニューをすでに用意していたかのように、醤油ラーメンが用意された。


店内に誰一人として俺以外に人は居ない。


まあ、そうだろうな。

ここは、いつもこんなに人が居ない。


ではなぜ店を続けられているのか…

それは、この店が、だからだ。


「それより、運営の方はどうなってるんだ?順調か?」


「ああ!おかげさまでな!今日も客人が来るんだ!相手してやってくれ!!」


「はいよ!」


俺はそう威勢よく答えながら、麺を啜った。

口の中に広がる、ラーメンの香りと、スープをよく吸い取った麺の味。


俺は晴れる日の少ないこの街のことを、毎回腐っていると思っている。


「確か、カプセル…が仕入れられたんだよな?」


「ああ!そうだ!!この街じゃ最強の原子、カプセルだ!!!少しでも熱しただけで、大量の蒸気を発生させる原子さ!!!」


「ほほお!!そりゃあすごいな!!!」


この街、起眞市は蒸気の街だ。

外を走る車は全て、ガソリンなんかよりも、蒸気を使って動く。


電車などという非効率なものもない。

存在するのは、蒸気で動く汽車だけだ。


この街…いや、この世界は、今やスチームワールド。


蒸気機関の発達した世界だった。


その世界での、大量に蒸気を発生させる原石というのは最強の二文字で表せる。


なぜなら、全てが蒸気で作られている。

その原石を汽車に組み込めば、たぶん、音速を超えるものも表れるかもしれぬ。


「それじゃあ、その原石、タンクに積むつもりか?」


「ああ。これを詰め込めば、完成だ。ようやく叶うぞ!!!念願のあれがな!!!!」


俺は口笛を吹くと、「まじで楽しみだな!」と答える。


と、外からチリンチリンと鈴を鳴らす音が聞こえた。

それは、ラーメン屋万華鏡へ誰かが入った合図である。


「もしかして来たか?」


「たのもー」


そう言いながら、店の中に入って来たのは、チャイナ服を着て、そして、腕にガジェットを付けた少年だった。


若そうには見えるが、多分16位だろうか、こんな奴が今回の客だとは。


「それで、君は挑戦する方向で合ってるのか?」


「ああ。よろしく頼む。」


すると、ラーメン屋の親父さんが一枚の手書きの紙を差し出した。


「それじゃあ、ここから先、どんなことがあっても自己責任ということで…いいな?」


「おう、いいぜ。」


すると、情念は、服の中から札束を差し出した。


「ほほう!!!それじゃあ、さっさと始めようじゃないか!!!」

そう言うと、ラーメン屋の親父さんは、長房の奥にある赤いレバーを引いた。


すると、店の中からいくつもの、プシュー!!!!!という空気の漏れる音が響いた。


「ここからはなんでもありなんだよな?」


「ああ。なんでもありだ。銃でも、剣でも暗器でもな。なんせ、闇のデスゲームだぜ?」


俺がそう言うと、床の俺が立っている部分が抜け、下へと降下する。


エレベーターのように降り落ちだ先。

そこには、大きな広場…いや、闘技場が現れた。


周りにはフェンスが囲まれており、乱雑に置かれた客席もある。


ラーメン屋万華鏡。

なぜか客が少ないのに、営業を続けていられるのは、これだ。


「それじゃあ、行くぜー!!!!!無敗のボディーガードにしてー!!!!最強の暗殺者ー!!!!!日高ー!!!!!!!!!!!!」


俺は銃をロングコートの中から出すと、銃の一番後ろの部分に、小さな金属のタンクを差し込んだ。


この金属の親指ほどのサイズのタンクの中には、一杯に詰まった蒸気が入っており、引き金を引くことにより、その蒸気によって弾丸が放たれる、要するに火薬式ではなく、蒸気式の銃となっている。


「そして無敗のチャンピオンに挑むのは___!!!!!!」


俺の目の前の少年にオレンジ色のライトが当たった。


「パマー!!!!!!!!!!」


そして、この闘技場は、違法とされている闘技場だ。

ある限定の者しか入場することのできない。


そして、挑戦者チャレンジャー無敗王チャンピオンに勝てた場合、その無敗王チャンピオンの座を奪い、ここら辺の商業施設の権利を掌握するだけでなく、掛け金の10000倍の金利が与えられる。


ちなみに今回この少年は、100000円を掛けてきた。

つまり、俺に勝てば、10億の賞金が与えられる。


ちなみに、俺の手持ちには、そんな金はいくらでもある。


俺が欲しいのは、刺激と、面白み。


さてと。

「それじゃあ、始めようか。」


俺が、ゲームマスターの親父さんに手を振ると、親父さんは大きな声で「さあ!!!!始めようじゃないか!!!!地獄のデスゲームを!!!!!!」

と言い、会場に熱を持たせる。


ちなみに、勝利条件は、相手を殺すことだ。


「レディー…ファイト!!!!!!」

その合図がなったと同時に、俺は銃を発砲。


弾丸が空気を切り裂き、少年の心臓へと直撃した。


「ぐはぁ!!!!!!」

少年は、心臓を押さえ込み、倒れる。


「おっと?もうおしまいか?」


俺か、そう思い、意識を確認しようと、少年に近ずくが、次の瞬間、少年の一度閉じた瞼が、開く。


「ガアアアアア!!!!!!」


少年は、獣のような雄叫びをあげ、右腕につけていたガジェットから、刃渡り1mほどの大きな刃を見せる。


「うぉ!?やるじゃねぇかよぉ!!!!!」


次の瞬間、刃が空気を切り裂き、俺の鼻の皮膚を刃が掠る。


「ふっ!!」


俺は、その獣の顔に蹴りを入れるが、ガジェットで受け止められる。


まあ、確かにこの少年は強いかもな。


俺に敵うような相手ではないかもだが。


俺は、獣がガジェットを振りかぶると、靴裏に仕込んである分厚い鉄板でその鋭い刃を受け止めた。


そして、力の入れる軌道を少しずらし、床へと打ち付けさせると、もう片方の足を使って、その刃を折る。


「ぐああ!!!!!!!」


このように理性が吹っ飛んでいるのは、何かドーピングしているのだろう。

試合が始まると同時に、何かの薬を体の中へと投与する。


すれば、こんなことになるかもしれない。


俺は、鉄板の仕込んだ靴を、トントンと、叩くと、回転蹴りをして、獣の頭を吹っ飛ばし、さらに距離を詰めて、倒れそうな獣の頭をサッカーボール見たく蹴りあげる。


そして、飛び蹴りを獣に打ち込むと、その獣は、よろけてその場に倒れる。


「これは決まったかー!?!?」


俺は獣に近ずくと、衝撃のあまり、薬の抜けたような少年を目にする。


「え…あ!?く、薬の効果は!?」


「あー…残念だな。切れたみたいで。」


「は!?き、切れる!?そ、そんな…クッソ!!!!!わかった!!!降参する!!!!降参!!!!!」


死ぬのが嫌なのだろうか。

両手をあげて、少年は、そう言った。


「あー…了解。降参ね。」

俺はそう言って立ち上がると、その少年の足に向かって、銃の弾丸を撃つつける。


「があああああああ!!!!!!!!」


俺は、その断末魔が面白くて、無意識のうちに手を叩いていた。


「あーはっはははは!!!!!いやー…君、言い叫び方をするね〜」


俺は、そう言いながら、足から滲む血を押さえつける少年の姿を見ていた。


「ぐあああああああ…!!!!!!」

俺は、その少年の苦しそうな笑顔を見ながら、その少年の前で、笑ってみせる。


まるで不気味なピエロのような笑い方をする。


「く…っそが!!!!!!!」


そう言いながら、少年は、目の前にいる俺に向かって拳を振り上げるが、俺は、その拳を、片手で掴み、腰から出したナイフで、ちょっとずーつ、皮膚にナイフの刃を入れて、血を出す。


「ぐあああああああ!!!!!!!!痛てええええええ!!!!!!!だ、誰か!!!!!!た、助けてくれええええええええ!!!!!!!!」

観客席に少年は訴えかけるが、観客席では、ゲラゲラと笑う人ばかり。


「お前の味方なんだ誰もいねぇんだよ!!!」


俺は甲高い声でそういうと、骨までも、ゆっくりと切り始める。


そして、骨も全て切断し、その少年の目の前で、切れたばかりの新鮮な腕を見せてあげる。


「いいか?この闘技場ではなぁ…降参って、僕は死にますってことを意味するんだぜ?よーく覚えておきな!!!!あ、死ぬんだから無駄な知識か!!!!!アーッハハハハハ!!!!!!!!」


俺は、そう高らかに笑うと、少年の頭に、銃を突きつける。


「待て!!!!やめろ!!!!!やめてくれ!!!!!!!妹のために金を稼ぎたかっただけなのに!!!!!!やめてくれよ!!!!!!」


その少年の涙が溢れ出る様子を伺う限り、多分、本当のことを言っているんだろう。


まあ、他人事なんだから知らないけどな。


容赦なく俺は引き金を引くと、頭蓋骨を貫き、バアン!!!!と派手な音が、闘技場へと鳴り響いた。


少年の全身の力が脱力する。


「いやー今日も良いショーでしたね〜」


俺はそういうと、パチンと手を叩いた。


「これにて、万華鏡、特別闘技場を終わります!次の挑戦者は誰かな〜??」


そういうと、地下に設置された闘技場のライトが落ちた。


ショーは終わったのだ。

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