通学のバスの中で喘ぎ声を聴いていた俺を罵倒する美少女と同じ〇〇になってしまった……
お好み焼き定食(※山本泰雅)
『……ンっ♡ れろ…………あっ、んぅ……♡』
早朝のバス内。一番後ろの座席に腰掛ける俺は、耳に付けたイヤホンでオーディオブックを聴いていた。
『……ンっ♡ れろ…………あっ、んぅ……♡』
人気のラノベ『落ちこぼれ魔道士の
その時。
「ちょ、ちょっと……アンタ。それ、止めてくれる……?」
隣にいた少女が俺を睨みつける。イヤホンから少し音声が漏れていたらしい。色気がない音声でも、内容は過激なので怒るのも理解できる。
スマホを操作してアプリを閉じると、少女にごめんと謝った。
「ハァ? ごめんで済むと思うの? 公共の場で……い、いかがわしいものを聞くなんて、この変態っ!」
「おい。声が大きいぞ。周りに迷惑じゃないか」
「既に私に迷惑かけてるわよ! スケベ男!!」
俺に
同じ高校の制服を着ているけど、こんな目立つ容姿の少女を俺は見たことがなかった。
俺たちのやり取りにバスの乗客らがひそひそ話。
『
『あの子かわいくね? 隣の男は冴えないけど』
『ホントだ。芸能人かな〜』
『ったく、最近の若者は……』
おい、誰だ。冴えないって言ったやつ。他人でもぶっ飛ばすぞ。
「
「それはこっちのセリフだ。毒舌女」
バスが最寄りの停留所に着くまで、一言も交わさずに時間を過ごした。
§ § §
──三十分後。停留所で毒舌女と別れた俺は、途中で会わないようにしながら学校へ。
教室に入ると、自分の席へ行き
同じ高校だが、生徒数が多いこの場所で顔を合わすことなどないだろう。
「──おっはー。
「お前か。
俺に声をかけたのは幼馴染の
「どした。嫌なことでもあったか」
「それがさ──」
バスでのことを話すと、
「ハッハッハ。それはお前が100%悪い。普通、エロラノベ聴くかよ」
「うっせ。俺の自由だ。もう漫画貸さないからな」
「冗談よせやい。それにしても、美少女か……声でもかけてみようかな」
俺は玄樹を白い目で見る。彼が陰で『送りオオカミ』と言われてるのを思い出す。ムカつくが、あの女の
その後。チャイムが鳴り、担任によるHRが始まると思ったが。
「今日から転校生が来ることになった」
転校生、と聞いたクラスメイトは色めき立つ。
男子? 女子? と騒がしくなるのを、俺は興味なさげにあくびしていた。誰が来ようと日常が劇的に変わる訳がない。
担任がクラスメイトを
「はい」
鈴を転がす声がした。……あれ、この声。
俺の疑問を解決するように、引き戸を開いた転校生は歩いていき教壇に立つ。
「エレーヌ・ジェームズ・
ペコリと頭を下げた少女──エレーヌに、俺以外は歓声の
「…………え」
間抜け面をしているはずの俺を
「ななななななななんで、アンタがいるのよ────ッ!!!!」
神様がいるなら……言いたいことがある。ふざけんなバカヤロー!
おわり
【筆者よりあなたへ】
お読みいただき、ありがとうございます。本編が面白そうと感じたら──♥(応援)と☆☆☆(レビュー)の評価をお願いいたします。温かいコメントも。
通学のバスの中で喘ぎ声を聴いていた俺を罵倒する美少女と同じ〇〇になってしまった…… お好み焼き定食(※山本泰雅) @muramitu
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