喫茶アヴァンティエール

「おかえりなさいませー、お客様ー」

「お邪魔します。変わった出迎えの挨拶ですね」

「お、新鮮な反応。然るにきみは一見さんかな? もうこの島でそういうリアクションしてくれる人いなくてさー」

「喫茶店の制服がメイド服なのも新鮮です」

「まさかメイド喫茶にも馴染みのない子が来るとは」

「ここはメイド喫茶なんですか?」

「いいえ、純喫茶アヴァンティエールです。名物はクリームソーダでーす」

「店長さんはいらっしゃいますか?」

「トヨコおばあちゃんはゲートボールに出かけていないんだなー」

「ああ、でも店長さんは健在ですか。よかった。ここの島を買い取ってからこちら、どこもかしこも責任者がいなくて」

「あ。ひょっとして、校長代理とラーメン屋店主代理と神主代理とアパートロビンソンクルー荘管理人代理と海の監視員リーダーお手伝いを掛け持ってる島主の新しいおちびさんってきみのこと?」

「そこに近々、郵便局長代理の肩書も加わる予定です」

「わーい、おめー」

「めでたくはないですね」


「そんなに偉いポストの代理やりまくってたら、喫茶店切り盛りしてお菓子焼くなんて無理ゲーすぎん? っていうか今の時点で体足りてなくない? 大丈夫そ?」

「まあ、なんとか」

「つよーい」

「実態はただのお手伝いさんみたいなものですから」

「元からトップがいなくても回ってたくらいだもんねー」

「ですが、代表者というのはいたほうが便利です」

「うんうん。話、進めやすいもんねー。ってか、そんなに忙しいなら、相棒にも手伝ってもらったら?」

「相棒?」

「丘の上の家で一緒に住んでるんでしょ? 無口で甘党だけど、やることはやってくれるじゃん」

「まだ、相棒と言えるほどの関係では……先日、偶然知り合ったばかりですし」

「あ」

「え?」

「りょ。そういうことなら、今の話は置いといて」

「そういうこととは」

「とりま、この特大クリームソーダ、一気飲みしちゃってー。お代はサービスサービスゥ」

「えっ……!?」

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鞄島戯曲 空空 @karasora99

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