丘の上の一軒家

「……あの」


「おそらく、人違いをなさっていると思うんですが」


「自分はこの島には先月やってきたばかりですし、あなたとは初対面です」


「あなたと住んでいた?」


「ここの先住者とおっしゃるのですか? 正当な手続きを踏んで家を購入したはずなのですが」


「ですから……いえ。元々この丘の上の家にお住まいでいらしたのなら、どうぞ」


「正直、一人で住まうには大きいと思っていたんです」


「いざ勧められると躊躇われるんですね。それが自然な反応とも思いますが。ご心配なく、これでも護身術を心得ていますので。子供と思って甘く見ないことです。いざとなったら急所を思いっきり蹴りつけますので。すねとか」


「ああ、ようやく肩の力を抜いてもらえたようで何より」


「それじゃ」


「今日の夕ご飯の買い出しと洒落込みましょうか」

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