森の入り口、店員の傍ら

「涙が涸れるまで好きに泣かせておくのが信条ではあるけれど、そうすると島が水没しかねないな」

「とはいえ、この鞄島がこれほど巨大な存在をいつまでも許容できるような容量はない」

「放っておけば勝手に」

「ああ、ほら」

「巨人の体が浮き上がっていく」

「取り出されるのだろう。誰だって、巨人の入った鞄をいつまでも持てはしないだろう?」

「あれこれ動くより」

「時には待つことが最適解になることも多くあるのさ」

「さて、巨人の足の裏をくすぐってやるのだと息巻いて走り去った相棒を探しに行かなくては」

「きみは? 喫茶店へ戻る前に先生を探しに行くのだね、賢明だ。どうせ、どこかで鬼に捕まっているだろうから、助けてやってくれたまえ。あれは、時間を置いても解決しない類の厄災だから」

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鞄島戯曲 空空 @karasora99

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