第2話 因縁相手

…コツコツとヒールの音が暗闇の中響く。

どこからともなく現れた猫が夜明けを指して鳴き声を一つ上げる…


「わぁ! かわいい〜、この猫どこの猫かな?もらってもいいかな?」


おどろおどろしい雰囲気を一変させる声が裏路地に響く。


「ちょ、やめてくださいよ、与島先輩…」


と後輩らしき男が女性に声を掛ける。どうやら女性の名前は与島というようだ。


「えー、硬いこと言わないでよ!鷹くん〜 ね、ボスには内緒でさぁ」


と女性は猫のことを持ち上げると可愛いなと目を細め、先程の男、鷹に声を掛ける。


「へぇ、そこも計画に入ってるんですか?与島さん?」


と女性の背後から一人の男性が忍び寄る。ばっと与島も振り向けば気まずそうに目を逸らして、猫を離す。


「か、過里海さん… 気の所為ですよ、私が猫を拾おうとしていたなんて…ね?ほらぁ、早くアジトに帰って資料まとめなきゃ… アハハ」


と冷や汗を書きながら過里海と呼ばれた男の方を見る。過里海は呆れたように与島を見ては、軽くため息を付き、アジトに帰るように促した。与島は渋々了承すれば、足を動かしだした。


数十分歩くと、目立たないところにある扉。過里海が手をかざせば、見た目とは反してスムーズにドアが開いた。


「おぉ、任務お疲れさんでした、」


と人よりも身長の高い男性が大型の刀を磨きながら笑顔で出迎えた。


「負傷者はいらっしゃいませんか?いらっしゃいましたら、近藤先生のところへ」


と出迎えた男性の後ろから小柄の女性がひょこっと顔を出し、笑顔で訪ねた。


「あぁ、本松さん、瀬里崎さん、お出迎えありがとうございます。特に負傷者はいませんよ、」


と与島が軽く答えると、瀬里崎は近藤という女医のところへと足早に向かい、負傷者はいませんと報告に向かう。本松のところへは、先程まで与島、過里海と一緒に任務に出ていた夏原が駆け寄り今日の任務の状況を目を輝かせて説明していた。本松はそれを笑顔で聞く。


とそうこう話しているうちに、与島は早速資料作りに取り掛かったようだ。だが先程のことも忘れていないようで、猫、、、と呟いている。


「お、与島、過里海、夏原、任務お疲れ、」


と部屋にりんとした声が響く。皆は一斉に声の主の方を見ては、作業を止める。


「ボス、労いの言葉、ありがたく頂戴します」


と過里海が丁寧に頭を下げる。そう、彼こそがこのREDEaglesのボスなのである。


「おうおう、そんなにかしこまんじゃねーよ、お、そうだ与島、ちょっと時間くれるか?」


とボスが与島を別の部屋に招き入れる。与島が部屋に入ったあたりで、先程のピリピリした空気がまた一変し、賑わい始める。


そんな中、いつも賑やかな久里月が何かを深く考えているようであった。




捜査一課side


「またREDEaglesかよ、いい加減にしろって感じですよね…小瀬村さん、」


といつもの調子で後藤が上司に尋ねる。小瀬村は呆れ顔で


「未然に防げればどれだけ仕事が減るんだか…」


と山積みの資料を読みながら、重い溜息をついた。小瀬村の隣で仕事をしていた高梨がメガネを直しながら口を開く。


「はいはい、そうやって喋ってるうちに、仕事はどんどん溜まっていきますよ、あそこの緑さんや大山さんのようになりたくなければ手を動かしてください、」


と高梨が指を指す先に、緑は頬を緩めて寝ていて、大山は爪にネイルを施している。ただ重要なのはその次である。二人の横には大量に何も記入されていない資料が山積みになっているのだ。今後のことを考えるだけで誰もが憐れみを向けるだろう。


「さぁて、仕事をしますか、」


と小瀬村の一言で、後藤、高梨は仕事に戻る。その雰囲気を感じ取った大山が渋々仕事に取り掛かる。笹川はいつもの調子で、静かに寝息を立てているのであった。


REDEagles side


そんなこんなでこっちに戻ろう。与島が別室から疲れ切った顔で出てきた。そんな様子を本松と久里月が心配そうに見ている。いきなり与島がホワイトボードを叩いたものだから、みんなが目を見開き与島に注目する。


「みんな大好き、、、新しい任務だよ、」


と与島が呟いた。その瞬間、本松は笑顔が固まり、久里月はとっても嬉しそうに微笑み、過里海はパソコンとにらめっこをしはじめ、医療版は、けが人が多くなることを予測して治療道具を揃え始め、夏原は本松をすがるような目で見て、という感じで室内の空気が一瞬にして凍った。そして、本松が立ち上がり


「最近、仕事量多くないっすか?」


と困り笑顔で与島に訴える。その瞬間、部屋の中の端っこでスマホをいじっていた杉 実風がバン、とスマホを置けば、どうなってるんですか?と問い詰める。与島は困ったように顔を背ける。そんなピリピリとしていた空気に耐えられなくなったのか、川内 新が書類を落とす。落とした書類が医療器具にかさり、医療器具が床に落ちる。医療版の困った声と川内の謝罪し慣れた声が交差する。そこに、先程まで任務に出ていた斎藤 蒼と木村 歩が戻って来る。もちろん煽り好きの蒼が参加しないわけがなく。もうその場はカオスとなった。木村、与島、過里海が頑張ってみんなを止めようとするが、全く持っての無意味。そこに久里月が猫を持って登場。与島に、いつも任務頑張ってるからご褒美…と渡せば、与島は使い物にならないほどデレデレになる。久里月は悪気がなかったらしく、過里海からの視線に耐えている。そんなとき、別室にこもっていたボスが出てくる。気が付かないで話し続けていた面々。過里海の一言でボスが来ていることに気がついた。いかがなさいました?と与島が聞けばボスはゆっくりと息をつき、


「気がついてないのか?お前ららしくないな…捜査一課のみなさんがこの辺を嗅ぎ回ってんぞ、」


その一言で皆の間に衝撃が走る。今は仕事量について話している場合ではない。急いで荷物をまとめ始める。ほんの数十分もしないうちにアジトは片付いた。

ボスを先頭にし、皆で裏口へ向かった。



捜査一課side

やっと、情報を調べていた高梨がREDEaglesのアジトの場所を掴んだ。これはこの上ないチャンスだ…とこの前も思ったのだが、惜しくも取り逃がした。今回こそはと皆が集中し始めているのが感じ取れる。

「みんな、準備はいいか?入るぞ?」

と私、小瀬村が声をかけた。後藤、大山は隣で小瀬村に静かに返事をする。高梨、笹川はインカム越しに。小瀬村が勢いよく扉を開ける。




・・・・・が、まさにもぬけの殻。そこには誰もいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

REDEaglesの記録 @usagitoyudouhu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ