老婆の決断
「アイテテテテ……」
立ち上がると、いつも腰に激痛が走る。慢性的な腰痛だと医者に言われたが、こう毎日痛いとかなわない。冗談交じりに先生に、『手術で切ってください』真顔で言ったことがある。目を丸くして驚いた先生の顔が、今でも忘れられない。ちょっとしたいたずら心だったが、そうやってストレス発散をしないと気が済まないのだ。八十一歳になる私の体は、心と共に年々衰えを隠し切れない。起きている時も寝ている時も、楽な時は一度もない。早く迎えが来て欲しいと毎日のように願っているが、思うようにならない。
「ニャオーン」
キジトラ猫のコタロウが、私の足元にすり寄ってきた。餌が欲しいのだろう、甘えた声を出し続けている。
「分かったよ、分かったからさぁ」
さっきもあげたのに、また欲しいと催促し続ける。餌をあげないと、餌をもらえるまで泣き続ける。それでも無視していると、私の太ももを前足で引っ搔いてくる。絶対にやめない。
「はぁ、シンドイわぁ」
立ち上がると腰にズキンと痛みが走る。痛くない立ち上がり方ができないかと、何度も腰を右左と動かしながら立ち上がったが、どれもダメだった。あとどのくらいこの痛みと付き合わなければならないのかと思うと気が重くなる。コタロウは、子猫だった時に自宅で飼い始めた。十年前は可愛かったのに、今はただの餌をせがむただのウザい猫だ。餌をあげることも億劫になってくる。
「ほら、食べな」
猫皿にカリカリを投げ入れるように入れた。すると、猫は鼻でにおいを嗅いだが、ソッポを向くようにその場を離れた。
「何よ、せっかくあげたのに!」
猫に向かって怒鳴りつけると、一目散に二階へと走り去っていった。せがむけれど、食べない態度を取られることはしょっちゅうある。最近は、それまでも許せなくなっている。
「もー、限界」
餌袋を床に放り投げると、パーッと粒粒の餌が散らばった。勿体ないとは思わなかった。もう十分育てた。この子から自由になる時がきたのだ。
電話の前に立つと、受話器を取った。
数か月後、大阪に住む息子の幸四郎がやって来た。
「準備できた?」
「ちょっと待ってよ。今、準備するからさ」
キャリーバッグを持って寝室へ向かった。ベットの上には、猫がスヤスヤと眠っていた。
「さぁ、行くよ」
コタロウの胴体を両手で掴むと、そのままキャリーバッグへと入れようとした。だが、うまい具合に体を滑らせると、スルリと胴体が手から抜け落ちた。そのままベットの下に逃げてしまった。自らの行く末が分かっているのだろう、必死に抵抗を続ける猫が哀れで仕方なかった。でも、コタロウとは今日でサヨナラすると決めた。
「ほら、こっちおいで。大丈夫だから」
ベット下を覗き込むと、猫の首根っこを掴もうと右手を伸ばした。
「シャー!」
猫は私に向かって威嚇すると、ベットの下の奥の方へと逃げ込んでしまった。今まで一度も威嚇なんてされたことなかったのに。ショックだったが、やはり自分の心が猫から離れてしまったことが原因だと分かっていた。だから、責めることはできない。
「ほら、おいで。今日であんたとはお別れ。誰かいい人に育ててもらうんだよ」
猫はシャーと再び威嚇を繰り返した。
「そんなに怒ってもダメだよ。もう決めたんだから。私は明日から大阪、あんたは神奈川県に残ってもらうの」
保健所に預ければ、後は好きにしてもらえばいい。殺処分になる可能性もあるが、それでも仕方がない。こうやってしゃがんだ体勢も腰が痛くてたまらない。もう、猫を飼うだけの体力は残ってはいないのだ。
「母さん、まだかよ。ちょっと、早くしてくんない?」
幸四郎の叫び声が廊下にこだました。私の代わりに、保健所に行ってもらうために来てもらったのだ。
「ほら、早く行くよ!」
腕を伸ばして猫の足を掴むと、思い切り引っ張った。その時ガブリと右手に激痛が走った。どうやら私の右手を噛んだらしい。ここで手を離してしまえば、息子に怒鳴られてしまう。ここは我慢をして、何とか嫌がる猫をバッグの中へ押し込んだ。
「じゃあね、バイバイ」
カチャリとキャリーケースを閉めた途端、猫は諦めたように静かになった。
「はぁ、終わった」
これで猫との生活におさらばできる。思わず笑みがこぼれた。
数時間後、保健所から帰ってきた息子の手には、空になったキャリーバッグが握られていた。
「どうだった? あの子、暴れなかった?」
「いや、大人しかったよ」
「そう」
「多分、受け入れたんでしょ、自分の運命をさ」
幸四郎は、あっけらかんとそう答えた。暴れるコタロウを想像してたので、体の力が一気に抜けた感じだった。自分の運命を受け入れるということは、冷静になれるものなのだろうか。
「ところでさ、いつ売るの? この家」
「まあ、もうすぐね」
そう言葉を濁すと、息子の手からキャリーバッグを受け取った。夫と結婚してすぐに住み始めたこの家を、すぐに売る気にはなれなかった。一度は終の棲家と決めたこの家を手放すのは、一年かけて悩み続けた結果に出した答えだった。これからは息子夫婦に養ってもらうと決めた。そのためには生活資金を捻出しなければならない。この自宅を売って金にするしかない。これから先、私の寿命はいつなのか分かればその分の生活費を払うのだけど、それが分からない以上息子には迷惑はかけられない。
十年前に夫に先立たれてからずっと独り身を貫いてきたが、それも今日で終わる。孤独を和らげられるのなら、安いものかもしれない。これからは一人ではないし、頑張らなくてもいいのだ。
「じゃあ、来週ぐらいまでにそこんとこ、話し合っておいてくれよ。こっちも、いろいろあってさ」
「分かってるよ。何とかするから」
「母さんの部屋、わざわざ用意したんだ。大変だったんだぜ、部屋一つ開けるの」
私の住む場所を確保するために、断捨離をしてくれたらしい。そこまでしてくれたのだから、私も覚悟を決めなければならない。
「じゃあ、また来週来るから」
引っ越しの手伝いをするために、幸太郎はわざわざ来てくれる。こんな親孝行息子に恵まれて、私は幸せだ。
「ハ~、清々した」
思わず心の声が漏れ出てしまった。猫がいるだけで、猫中心の生活になっていた。猫のために起きて、猫のためにご飯をあげる。猫がフンをすれば片付けて、寝る場所さえ用意しなければならない。猫の鳴き声がなくなっただけで、こんなに平穏な生活になるとは。明日から誰にも起こされることなく、自分の好きなように生活ができる。もう、自分のために生きると決めたのだ。明日から、清々しい朝が始まろうとする。そう考えるだけで、自然と笑みがこぼれてしまう。
「厄介者もいなくなったし、片付けようかね」
誰に問いかけているのか自分でも分からない。ただ、声に出して今の気持ちを言いたい気分なのだ。
一カ月後、私は無事に息子夫婦が住む一軒家へと引っ越すことができた。自宅を売ったお金は、全て息子に預けた。これから先、何不自由なく生活できると思えば安いものだ。これからは息子夫婦と楽しい時間を過ごす。手塩にかけて育てた自分の息子だから、きっと私に優しくしてくれるだろう。嫁だってそうだ。実家が遠かったせいで、今までそんなに会えなかった。だからその分、話せなかった話をしよう。どんな食べ物が好きで趣味は何なのか。時間はたくさんあるのだから、少しずつ距離を縮めていこう。
「拓海、おばあちゃんに挨拶しなさい」
孫の拓海がリビングに入ってきた。
「拓海、久しぶりだねぇ」
拓海は中学一年生になっていた。父親に似て小太り体形になってきた。小さな頃はうちによく遊びに来ていたが、最近はめっきりとその数は減っていた。
「こんなに大きくなって。あんなに小さかったのにねぇ」
「あぁ、はい。そうですか」
私の背を超えている年齢になっていたことに、改めて感慨深いものを感じた。
「はい、これあげる」
ポケットからポチ袋を取り出した。中には千円札が三枚入っている。
「どうも」
拓海はペコリと頭を下げると、二階へと上がっていった。あんなに人懐っこい子供だったのに、他人行儀な物言いが残念に感じた。でもその距離は、すぐにでも詰められるだろうと高を括っていた。だって、これからは一つ屋根の下で暮らすのだから。これからは、自分の思うような生活ができると思っていた。多少は自分の好き勝手な生活できると思っていた。でも現実は、想像していた生活とはまるで違っていた。
引っ越してきて一ヶ月が過ぎたころだった。その日は、近くの公園まで散歩に出かけた。帰り道を間違ってしまい、いつもより三十分ほど帰宅が遅くなってしまった。玄関先で汗が止まらなかった。台所へ直行すると、冷蔵庫から麦茶の容器を取り出しそのままがぶ飲みした。そのせいで、眠りについた一時間後に目が覚めてしまった。
私が寝ているのは、リビングの隣の六畳一間の和室。その日の夜、尿意を感じて扉を開けて廊下に出た。いつも起きない時間帯だから、気配を消すようにゆっくりと歩いた。トイレはリビングの扉の目の前だった。リビングには明かりが付いていて、扉が少しだけ開いていた。
「ねぇ、ばあさん、いつまでいんの?」
「何言ってんだ、これからずっと住むんだよ」
「えー、マジで? 俺、耐えられるかな」
「そんなこと言わないで。何がそんなに嫌なの?」
「だって、風呂の中、垢が浮いてんだよ。マジで、ばあちゃんの後に風呂入りたくないんだけど」
「あんたがさっさと入んないからでしょ。今度から、一番最初に入りなさいよ」
「何でだよ。何でこっちが気使わなきゃなんねーんだよ。ここ、俺んちだぞ」
「おい、そんな言い方すんなよ。聞こえたらどうすんだ」
「聞こえるわけないじゃん。さっき見たら寝てたよ」
「そうか……でももう、おばあちゃんの家はないんだ。一緒に住むしかないんだよ」
「老人ホームに入れりゃいいじゃん」
「そんな簡単にはいかないよ。母さんの気持ちもあるし」
「そうよ。だから、我慢しなさい。お風呂のことは、ちゃんと考えてあげるから」
「ちぇ、分かったよ」
最後まで聞かずに、そっと部屋の中へと戻った。頭は真っ白になり、手指は小刻みに震えていた。ここに来てから、何かよそよそしさを感じながら生活していた。一人暮らしをしていた時よりも、孤独を感じるようになった。思い描いていた未来とは、程遠い現実だった。
「ハァ」
こんな思いをするのだったら、一人で暮らしていた方がマシだ。
「コタロウに会いたい」
保健所に連れて行かれたコタロウは、あれからどうしたのだろう。殺されたのだろうか。昔は殺処分が当たり前だったが、今は譲渡されることが一般的になっている。今頃、誰かの腕の中で幸せに暮らしているのだろうか。
「コタロウ……コタロウ、会いたいよ」
一緒に住んでた頃は、餌をせがまれることが苦痛で仕方なかった。コタロウは寝ている私の顔に顔を擦り付けて起こそうとする。もっと寝たいのに、無理やり起こされて、何度もコタロウの体を押し退けたことだろう。それでもめげずに私の体にすり寄ってきたコタロウが、脳裏に蘇ってくる。
「コタロウ、助けてよ」
こんな家、嫌だ。この家の資金は、私が出したのに、どうしてこんなに肩身の狭い思いをしなければならないのか。
金目当て。
その言葉をずっと心の奥に仕舞い込んでいた。そうすることによって、自分を平静に保つことができたから。でも、もう無理だ。息子の乗っている車も高級車になったし、嫁の着ている服も、少しだけ派手になった気がする。夫婦で結託して私の財産を横取りしたってことか。今更気づいてももう遅い。この人達に見捨てられたら、私は生きてはいけない。我慢するしかないのだ。
「ハァ……コタロウに会いたいよぉ」
今私にできることは、コタロウの名を呼び続けることだけだった。
翌朝、下半身に冷たい物を感じて目覚めた。布団を上げてみると、敷布団にお漏らしをしていた。昨日、トイレを我慢したまま寝てしまったせいで、お漏らしをしてしまった。
「まあ、すぐ乾くか」
自分がまた寝るのだ。この年になると、多少の臭いにおいも我慢できる。そのまま、布団を折りたたんで押し入れにしまった。これが、自分を更なる地獄へと追い詰めるとは想像すらしていなかった。
一週間後の夜、再びトイレに行こうと廊下に出た。今日は必ず用を済ませなければならない。だが、前回と同じようにリビングのドアが少しだけ開いていた。今回は、夫婦だけの会話だ。
「ちょっと、あなたから注意してよ。お母さん、布団におしっこ漏らしてたのよ」
ドキリと胸が波を打った。私の知らないところで、布団を外に干していたらしい。
「どうしよう、お母さん、ボケちゃったのかしら」
「おい、そんなことないだろ。まだちゃんとしてるよ」
「まだって言うけど、すぐに介護が必要になるかもしれないじゃない。私、嫌よ。お母さんの面倒見るの」
「おい、だからまだ早いって言ってるだろ」
「そうやって、すぐ話逸らすんだから。拓海の手が離れて、ようやく自由な時間が持てるの楽しみにしてるのよ」
「じゃあ、何で母さんの同居、承諾したんだよ。いつかは、そういう時期が来るってわかってただろ」
「そりゃそうだけど……こんなにすぐにじゃ困るのよ」
「ったく、新築の家に住みたかっただけだろ」
「ちょっと、人のせいにしないでよ。あなただって、同じでしょ。大体ね、あなたの給料が少ないからいけないんじゃない」
「何だよ、人のせいにするなよ」
私は再びその場を離れた。私の足は寝室ではなく、玄関へと向かった。こんな家、住んでいたくない。頭がおかしくなりそうだ。扉を開けて外へと出た。
「お母さん?……おい! お母さん!」
「どこに行くんですか、お母さん!」
二人の声が後ろで聞こえたが、構わずに足を止めずに進んだ。もう、こんな家にはいられない。私は自由になるのだ。
どのくらい歩いたのだろう。周りを見渡すと、見たこともない道路を歩いていた。蕎麦屋の看板も自転車の店も、どの店も見たことはなかった。
「アイテテテ……」
裸足だということに、今気づいた。足の裏を見ると、赤く腫れ上がっていた。半袖のパジャマを着た私を、通りすがりの人は驚いたような表情を浮かべて見つめている。深夜なので人通りは少ないが、ボサボサの髪と悲壮感漂う表情を見れば、驚くのは当然だろう。それでも、歩みは止められなかった。もう、あの家には戻れない。自宅を壊して手に入れようとした幸せは、単なる息子の欲望にのせられバカを見ただけだった。
「コタロウ」
横断歩道を渡る猫に目に留まった。その姿は、コタロウそっくりだった。もしかしたら、私のことを迎えに来てくれたのか。
「コタロウ……コタロウ、会いたかったよ」
コタロウは私の声に気づくと、こっちへ歩いてきた。
「おぉ、コタロウ。こっちだよ」
私の声が分かるのか、一目散に私の方へと歩いてくる。やっぱり私のことは覚えていてくれたか。嬉しいよ、コタロウ。
「おい、コタロウ。どうしたの。こっち、おいで」
なぜか、コタロウは私の二メートル前で止まった。何度呼んでも私の足元に来ようとはしない。
「コタロウ、どうしたの? おいで、撫でてあげるから、おいで」
私はその場にしゃがむと、コタロウの名を呼び続けた。
「コタロウ、おいで。あんたの好きな餌、あげるから。また一緒に暮らそう。ね、コタロウ」
コタロウに向かって、右手を上げておいでおいでをした。コタロウと一緒にいた頃が一番幸せだったと、今さらながら気が付いた。コタロウと一緒に住もう。コタロウだって、同じ気持ちなはずだ。コタロウは私と一緒にいた方が幸せに暮らせるのだ。
「コタロウ……コタロウ! おいで!」
ありったけの声を張り上げるとこちらの思いが通じたのか、コタロウが私の方へと向かって走ってきた。コタロウ。やっぱり私のことが恋しかったのか。よかった。嬉しい。もう一人ではないのだ。
「コタロウ、おいで」
コタロウは私の目の前に止まると、座ってしまった。そして、私の方をジッと見つめた。私が元飼い主であることを確かめているようだった。
「コタロウ、会いたかったよ。さぁ、おいで」
私はコタロウに向かって右手を差し出し、頭を撫でようとした。その瞬間だった。目の前が突然真っ白になり、眩しい光が両目に覆いかぶさった。どのくらい、目を瞑っていたのか分からないが、恐る恐る目を開けると、コタロウの姿はいなくなっていた。
「コタロウ! コタロウ! どこにいるの!」
さっきまでいたコタロウの姿はどこにもなかった。周囲を何度も見回しても、真っ白な光しか見えない。
「だ、誰か……誰か、助けて」
思うように声が出せないが、何とかかすれ声をあげて周囲に助けを求めた。だけど、一向に人間が現れる気配がない。
「あっ」
そして、今度は目の前が暗闇に包まれた。私の意識も暗闇の中に消えていった。
「……か」
どこからだろう、かすかに音が聞こえてきた。ゆっくりと目を開けると、女性が私に向かって声をかけていた。
「あ、あなたは……誰?」
「大丈夫、ですか? 意識、戻られましたね。よかったです」
ショートヘアの女性が笑みを浮かべて見つめていた。見たことのない女性だった。
「あぁ、どうか、助けてください。ここは、どこですか」
「ここって……分からないんですか? 今いる場所が」
「はい、分からないんです。ここは、どこですか? コタロウは、どこですか?」
「コタロウ?……コタロウって、何ですか」
「猫です、私の。さっきまで、そこにいたんです。コタロウは、どこにいますか」
それからしばらくの間、沈黙が続いた。
「あの……ここ、施設ですよ」
「施設? 施設って、どこのですか?」
「老人ホームです」
老人ホーム? どうして? 道端にいた私が、どうして老人ホームにいるのだろう。
「あの……正直に話しますね。ここに来たこと、ショックでした?」
「私、息子の家にいたのよ。引っ越したばかりだったのに。どうして、老人ホームにいるのよ」
また、しばらく沈黙が続いた。
「……おばあちゃん、捨てられたんですよ」
「えっ」
「息子さん、おばあちゃんと住むの、難しいって。訳の分からないこと言うし、お漏らしもするから手に負えないって」
「な、何いってんのよ」
「おばあちゃん、認知症なのよ。それは、理解してる?」
認知症? 何言ってんだこの女は。優しい声をしてるから、いい人だと勘違いしていたようだ。この女は悪い女だ。
「何言ってるって、言ってんだよ、バカ!」
右手を思いっきり振り上げたら、女性の頭を直撃した。
「痛い! ちょっと、何すんのよ!」
女の叫び声が耳に響いた。優しい声とは全く違う、少しドスの効いた声がした。
「あんた、捨てられたんだよ。一生ここで暮らすんだ。思いっきり遊んであげるから。楽しみにしときな」
耳元で囁くように言った。その後のことだった。急に首元が痛くなった。そして、体ごとどこかに持っていかれるように、お尻がふわりと浮いた。その姿は、息子がマクロスを連れて行った姿と同じだった。
引きこもりの女 絵本真由 @samori
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