プロローグ 結

そんな風に考えているとデパートに着く。

デパートに着いて歩くこと5分

俺たちは服屋の前に立っていた。


「ここで買うのか…」

「もちろん!」


俺が連れてこられた店はいかにも陽キャが来るであろう派手な店だった。

なんで俺がこんな派手な店に連れてこられなきゃいけないんだ。

ろくに女の一人や二人とも話したことがなくて、女どころか男ともまともに話したことないのに。

正直妹ですら話す時に少しだけ戸惑うからな…

そう思いつつ俺たちはその服屋に入って行った。


「さて。

 じゃあ私は兄さんに似合う服を持ってくるから、なんか適当に見ててよ」

「あぁ…分かった。

 じゃあ選んだら呼んでくれ。

「分かった。

 じゃあ少し待ってて」


そうやりとりをして待つこと15分。

時間を潰していた俺の側に妹が寄ってくる。


「兄さん、お待たせ。

 選んできたから早速着替えてきてほしいな」

「俺に似合うか分からないけどな」

「もぉ~そんなこと言わないでよ。

 兄さん普通にかっこいいんだから」

「からかうなよ…」


まさか可愛い妹にこんな事を言ってもらえるなんて、今日は良いことが起こりそうだな。

だけど今は妹が選んでくれた服を試着するとしましょうかね。


「じゃあ着替えてくるよ」


そう言って俺は妹と試着室の前へと足を運ぶ。


「はい!これ。

 私が選んだやつだよ」

「ありがとう。

 早速着替えてくるよ」


俺は妹が選んだ服を持って試着室に入った。

試着室に入った俺は早速服を並べたのだが高そうな服ばかりだ…

うちはお金が無い方ではなく、むしろかなり裕福だ。

そう思いつつも、服に手を伸ばす。

そこから10分程度時間をかけて、4つの服を試着し、妹に見てもらった。


「そろそろ帰るか」

「え、もう帰るの?

 お昼とか食べていかないの?」


そろそろ帰るかと提案をすると妹がここで昼を食べないかと返してくる。

どうするか…こいつには悪いけど、今日は推しの配信がもう少しであるから帰ってみたいのが本音だ。


「今日は俺が昼を作ってやるよ」

「本当に!?」

「じゃあ今日はもう帰るー」


納得してくれたようだな。

今日は悪いがこっちを優先させてもらわなくちゃな。

いつも同じようになるが毎回結局妹を優先にするから今日こそはな。

今から帰れば間に合うし、昼を作ってる最中に配信を観れるから俺の作戦は完璧だ。

そう心の中で思いつつ俺たちはデパートを出て途中の交差点の信号を渡り歩いた時に妹がある事を言った。


「ねぇ、普通の道じゃなくて、あっちの道通らない?」



あそこか…。

妹が指した先にあるのは道が少々めんどくさいのだが、その途中の信号を渡れば近道になる道だった。

本来俺は来た道と同じルートで帰るのだが、今回は妹の願いを聞き入れてしまった。


「いいよ。

 じゃあ行こうか」


俺たちは近道をする為に、その道へと進んでいく。

そしてもう少しで信号がある地点に着こうとしている。

すると急に妹が走り出した。


「兄さんおそいよお〜」


妹が信号を走り抜けようとするが俺はある違和感に気づく。

信号が赤なのにも関わらずこちら側に向かってくるトラックは止まる気配がない。



「────ッ!!危ない!!」

「え?」


妹がトラックが止まらないことに気がついた時には信号のちょうど真ん中あたりに着いた時だった。

頭で理解をする前に俺は体が咄嗟に動いていた。


「────」


俺が走りながら名前を叫んでも車の音でかき消される。

そうしているうちに俺はいつのまにか妹の背中を押していて信号の真ん中に、トラックの目の前には俺がただ一人居ただけだった。


「────」


俺は一瞬誰かに呼ばれた気がするが、一瞬すぎて何も分からなかった。

そうしていると急に体が痛くなってきた。

あぁ…これが車に轢かれた後の痛さか。

確かにこれは痛いな…

逆に笑えてきてしまう。


「ここで終わりか…」


今思えば、色々上手くいき過ぎていただけだったんだ。

今度は上から妹の人生を見守っていようと思う。


「兄さん!」


そう苦笑していると妹が倒れている俺の側に寄ってくる。

相変わらず可愛い顔立ちをしていた。

もっと見ていたいが、お別れの時間だ。

こんな重症ではもう助からないだろう。


「本……当に……ごめんなさい。

 私のせいで…兄さんがこんなことになるなら…私がもう少し注意深くしていれば」


泣きながら言うその姿を言う前に俺は、今日、この日、この時間に。



トラックに轢かれて死んだ。

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~異世界消夢~ 異世界召喚されて消えた夢 @nariyomu

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