第3話 模擬戦

ヘクトに横薙ぎ払いが放たれる。ヘクトは槍の中心に持ち、剣戟を槍の石突き部分に来るように誘導し、その衝撃を利用して回転させ受け流し払う。其の御蔭で対戦相手の武器をはたき落とす事ができた。とは言え、まだ時間があるので剣を拾って返し、再度打ってくるように言う。次は上段からの振り下ろしを半身になることで避け、そこから無理やり振り上げてきた剣から飛び退く様に、バク宙で回避する。若者は涼しげな顔をしながら、飄々と避けるヘクトにいい加減当たらなく痺れを切らした様で、

「当たれッ!!」と言いながら上段からの振り下ろしを繰り出す。怒りで無駄な力が入っているのかお粗末な剣筋を冷静に見遣り

「残念だ....」と呟き剣の横腹を殴り、剣筋を逸らす。それと同時に三分が経った。

その後の試合もこれといった闘いはなく、ヴィナの番となった。

ヴィナは柔軟を始め体が温まった所で、片手剣では長すぎるので短剣一本と投げナイフをバレないように三本持って行く。

幾秒もしない内に砂時計をひっくり返し、砂が落ちていく。

ダッッッと土を蹴る音が聞こえた。ヴィナが砂が落ちたと同時に体を前に傾け其処に足を追いつかせるように走った。三メートル程離れた距離からステータスを活かして飛び上がり、自分の体重と合わせて短剣で斬りつける。ヘクトは其れを柄で受け止め其の儘押し返した。押し返されながらもヴィナは懐から徐ろに投げナイフを取り出し投げた。ヘクトは少し驚いた様子で横に跳躍して回避する。そして、直ぐに横から回り込んだヴィナが刺突をした。槍の間合いより詰めた攻撃を地面に石突を差し其れを支えにヴィナから距離を取った。 

ヘクトへ突っ込み外套を翻し小さい体を隠しヘクトがいた方向へ全力で投げる。そして近くにある投げナイフを2本取り1本を左手に持ちさっき投げた投げナイフを避けたヘクトへ下から斬り上げ左手の投げナイフで槍を持っている手ヘと斬りつける。それを咄嗟に受け止めていた槍で払う様にして回避した。ヴィナは払われた勢いに委ね体を捻り回転斬りを叩き込む。それを受け止め押し返し抑え込んだ。暫し抑え込まれたヴィナは正面からの力のぶつけ合いは不利だと判断し抵抗せず押され込まれる瞬間にスライディングでヘクトの股をくぐり際に足を払い転ばせようとするが脛を蹴りつけただけで終わった。

クッッッ...痛みに耐えるように声で押さえつけるヘクト

それに繋げるようにヴィナが短剣で足の腱を斬りつける。それを飛び上がることにより避けた。空中に逃げたため隙が生じ投げナイフを2本投げ付けそれを槍で払う。着地点へ走り着地狩りを狙うが石突で手を弾かれ地面に手をついてしまった。だが手で体を支え足蹴りを未だ空中にいるヘクトを蹴りつけに行く。ヘクトが石突を地面に差し槍を支点に足を蹴り返され数メートル程転がり衝撃を和らげる。

次に無理矢理槍の間合いの内側へ入りインファイトへ持っていこうとしたが三分経ってしまった。

「終了!」とヘクトが言った。

三分間が三十分、一時間の様に感じられた。兎に角疲れ切った体を大の字で倒れ少し休む。

ヘクトはヴィナを芝蘭と褒め、ヘクトの現役時代の仲間を呼んで師匠に付けようと言ってくれた。

ヴィナにとっては渡りに船で、二つ返事で承諾した。此の後に魔術適正を測る為少しの間を置いて、ギルド内の2階にある引き戸を開け中へ入り部屋の中心にあるパネルのようなものがあった。

人は、無意識に魔力が漏れ出しており、それを感知し辿ることによって魔力の濃度、魔術適正及び魔力量を測定できる。それを活用した魔道具であった。

パネルに手を翳すとパネルが光り、紙に写し出される。


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魔力濃度 68%   魔術適正 聖属性 闇属性

魔力量 120

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ヘクトが驚愕した顔で直ぐに呆れた様な顔になりながら紙を見ている。

「魔力濃度俺よりも高いし、適正では対立属性の聖属性と闇属性の2つ持ち《デュアル》は聞いたことないぞ.......」

と言っていた。

兎に角一通りこなし終わったので、ヘクトに帰る旨を伝えた。後日に初依頼が控えている為直ぐに宿へ戻り湯浴みをして身体を洗い、晩御飯を食べて寝た。





――――――――――――――――――――――

師匠は後2週間後に来る予定です。

後、ヘクトが師匠じゃないのはヴィナには片手剣が一番合いそうであるからで、ヘクトは基礎的な歩法ぐらいしか教えることがありません。

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盈月のヴィナ 多々羅 @yuzukiti5

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