第7話 オリジスタンにて③
後方で火の手が上がった。救援に駆けつけた。
「それで、敵はいないと?」
「は、それが、消えた、と言った方が適切でして……。」
味方の後陣に到着すると確かに煙はあるし、交戦の後もあるのだが肝心の敵がいない。
「意味がわからないぞ。人間が消えるはずあるまい。どこかへ移動したのだろう。」
経験豊富なキヨテですらそうなのだ。私だって腑に落ちない。
「私たちが来た方向にはいなかった。つまりさらに内地に行ったか、前線と平行に移動したかどちらかね。」
「いずれにしても被害が広がってしまいます。この様なところに敵はいない想定の布陣ですから。」
「ええ、すぐに追いかけましょう。私とユリアで内地側へ。オリオンは前線に沿って北へ。キヨテ、南をお願い。」
「御意」
「各隊、見つけたらすぐ他の隊に伝えるように。解散!」
まだそう遠くへは行っていないはず、というか行けるわけがない。
このときはまさか戦意旺盛の状態で三時間も馬を駆けるとは思わなかった。
「ユリア、おかしいと思わない?もうじき国境についてしまうわ。」
「ええ、かといって別れた隊からも連絡はありませんし。」
我が国の国境の関が見えてきた。攻撃をうけている様子はない。
あわただしい様子に守備の兵が出てきて私たちに所属を問う。
「いずれの兵か。武装はこの方面の軍のものではないが」
「宮直属の良名。こちらに敵が来なかったか」
「は、失礼。ここは前線からはるかに遠くです。ここまで敵は来ておりません。」
「そうか、ありがとう。しばし兵を休ませたい。馬にも水を。」
「了解しました。」
妙な。敵はどこにいったのだろう。
五教科/八方面戦争 受験に殺された私が転生して異世界征服 @biuret_NH2CONHCONH2
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